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セブン&アイ、買収で地位確立へ 米コンビニの売却話「千載一遇のチャンス」

 セブン&アイ・ホールディングス(HD)が、米セブン-イレブンを通じて米ガソリンスタンド併設型のコンビニエンスストアを運営するスピードウェイを210億ドルで買収することが決まった。屈指の大型買収に踏み切った背景には、成熟市場の国内に対し、成長余地の見込める米市場での地位確立を目指す狙いがある。一方、コロナ禍で個人消費が伸び悩む中、統合効果を疑問視する声もある。

 「グループの成長原動力は国内外コンビニ(事業)で、米国は成長を牽引(けんいん)するドライバーだ」。セブン&アイHDの井阪隆一社長は2日の会見で、今回の巨額買収の意義を強調する。折に触れて北米市場の有望性を言及しきた井阪氏には、スピードウェイの売却話が「千載一遇のチャンス」と映った。

 スピードウェイ買収にこだわった要因の一つが相乗効果の高さだ。

 米セブンは積極的なM&A(企業の合併・買収)でチェーン網を拡大してきたが、空白地帯も多い。スピードウェイの出店エリアは米セブンと重複が少なく、商品構成も米消費者の生活必需品であるガソリンの1店舗当たり販売量で米セブンの1.5倍を売り上げる。

 国内市場ではコンビニ上位3社で9割以上のシェアを確保するのに対し、米市場は個人経営が多く、昨年12月末の米国のコンビニ店舗数15万2720店のうち65.4%が10店舗以下のチェーンだ。店舗数1位の米セブンでさえシェアは5.9%にとどまり、上位10社合計でも2割に届かない。セブンはこの“余白”が北米市場の成長力とみる。

 だが、今回のスピードウェイ約3900店を手中に入れるため投じた210億ドルは、17年に米アマゾン・コムが米高級食品スーパー、ホールフーズ・マーケット(約460店)を買収した137億ドルをはるかに上回るほど巨額の投資だ。

 加えて、セブン&アイHDは、国内の百貨店やスーパー事業は構造改革の真っただ中だ。「中長期的にみると(規模拡大による)コスト削減などのメリットはある」(大手証券関係者)とはいえ、コロナ禍による外出自粛などで個人消費の機会が減るなど事業環境は厳しさを増す中、財務を圧迫する今回の大型買収はリスクを伴う。

 井阪氏は「アフターコロナで求められることは何かを自問自答している」としながらも「コロナは永遠に存在するわけではない。5年後、10年後を考えればメリットがある」と語った。(日野稚子)

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