テクノロジー

砂漠の空気で飲料水を生産 食料安全保障で初の試み

 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ近郊で、空気中の水分からボトル詰めの飲料水を生産する初の試みが行われている。水不足に悩む国で、井戸の掘削や海水の浄化に替わる、持続可能な方法で飲料水を生産するためのモデルとなるほか、食料安全保障向上策として農業分野を大きく変える可能性がある。

 太陽光でエコ重視

 米アリゾナ州に拠点を置くテクノロジー企業、ゼロマスウオーターの創始者、コーディー・フリーセン氏によると、手始めに水蒸気を吸収し太陽光エネルギーで水を抽出する1台2500ドル(約26万円)の「ハイドロパネル」を1250枚使って生産を始め、最終的に約1万枚に拡大する計画だ。縦約240センチメートル、横約120センチメートルのパネルは、空気が汚れていても水の分子だけを捉えられるよう集塵(しゅうじん)フィルターと化合物が使われているという。

 ゼロマスのプロジェクトは生産に再生可能エネルギーを利用する点で、多くが化石燃料を使用するUAEの海水浄化施設と異なる。同社から飲料水を購入するドバイ国営企業のIBVのゼネラルマネジャー、サミュラ・カーン氏によると、充填(じゅうてん)工場は太陽光で運転され、ボトルは再利用が可能で、キャップは環境に優しい竹製を使用する。

 また、カナダでコンサルティング会社、アモスウォーター・リサーチを経営するローランド・ウォルグレン氏は、空気中の水分を得る技術はほかでも使用されているが、ゼロマスの生産規模でボトル詰めにする企画はほかにないという。

 初期の生産能力は年間230万リットルほどで、当面、大量生産を手掛ける他社と競合しない。カーン氏によると、今のところハイドロパネルによる飲料水製造は海水浄化に比べ大幅に割高で、現地での販売価格は1リットルで約10ディルハム(約291円)。高級輸入ミネラルウオーターのエビアンやフィジーウォーターなどと同じ価格帯だ。ゼロマスはラクダの飼育やデザートサファリ(砂漠ツアー)で知られる村、レバブに工場を建設中で、IBVがガラス製ボトルでホテルなどに販売する。

 UAEのボトル入り飲料水の需要は高い。市場調査会社のユーロモニター・インターナショナルの調べでは、昨年1年間の1人当たりの消費量が平均127リットルで世界第10位だ。

 アリゾナ州立大学で工学の教鞭(きょうべん)を執るフリーセン氏は「トマトなどを現地で生産できれば輸送コストや食料の購入費を削減できる。次は農業用水の生産設備を開発したい」と語る。これまでの投資額は明かさなかった。

 「閉じた農業」に適合

 食料輸入への依存を減らしたい湾岸諸国は、牛乳の増産を目指し7月に南米のウルグアイから4500頭の乳牛を輸入。また、自国でコメの生産を試みており、成否は継続的に使用可能な水量に大きく左右される。

 ウォルグレン氏は「UAEの気候はハイドロパネルの利用に最適で、農業用水生産は採算が取れる。UAEでは野菜やハーブを水耕栽培など屋内で生産する企業が近年急増している。パネルによる農業用水が利用できるのは、従来の農業よりもかなり少ない水量で済むこうした『閉じた環境』での農業だけだ。海水は浄化してもかなり多くの塩分を含み植物にダメージを与えるため、混入物が極めて少ないパネルによる水の方が農業にはるかに適している」と話す。(ブルームバーグ Verity Ratcliffe)

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