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危機的状況の“想像”がリスク減らす

 □となりの法律事務所 パートナー弁護士・沖崎遼

 危機的状況が発生したときに必ずリスクも発生するのかといえば、そうではない。新型コロナウイルスのようなパンデミック(世界的な大流行)なのか、地震などの自然災害なのかなど危機的状況はさまざまだ。その種類によってリスクが発生する業種もあれば、むしろチャンスとなる業種もある。

 例えば、東日本大震災のときのように国内プロパーの危機であれば、マイナスの影響を受けるのは国内での物流をサプライチェーン(供給網)の柱にしている業種となる。逆に、新型コロナのようなパンデミックであれば、海外の工場や物流をサプライチェーンにしている業種が影響を受ける。

 危機的状況はあくまでリスクを引き起こすトリガー(引き金)にすぎない。しかも、そのトリガーによって自分の会社が「どれだけの影響をいつまで受けるのか」は判然としない。だからこそ、まずは自分の会社にとってリスクを引き起こすトリガーとなりうる危機的状況を“想像”することが、リスク対応上、重要になる。想像ができれば、リスクに伴って生じる可能性のある不確実な事象を受け入れるとともに、それを乗り越えられる。

 具体的には、取引先との契約交渉の場において、常に自社にとって有利か不利かを勘案しながら契約の成立を目指す。取引先から不利な条件や条項を求められることもある。相手の提案や契約書の一言一句から生じうるリスクを想像し、リスクが生じたとしても、対処できるレベルかどうかを勘案して妥結点を見つける。想像力を働かせてリスクテイクした上で、適切な経営判断を行うわけだ。

 筆者は東日本大震災をきっかけに、破産をはじめ、法人の債務整理の案件を数多く手掛けた。大震災による影響は、数年にわたって波及する。政府は中小企業向け融資の利払いを猶予するなどの延命策を講じた。しかし、リスクが顕在化し、修復できないレベルまで「ほころび」が大きくなってしまった。

 事業が順調に推移していたにもかかわらず、会社をたたむという苦しい決断を強いられたケースもある。会社には従業員とその家族がいる。破産の決断によって関係する全ての人々を不幸にしてしまうのは断腸の思いだっただろう。

 新型コロナでは、緊急事態宣言が終了した後で安心感が生まれてしまった。現在は全国で急速に感染者数が増え、国としても静観できない状況になりつつある。危機的状況が一段落したとしても、リスクが収まったと判断するのではなく、敏感に対処すべきだ。

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【プロフィル】沖崎遼

 おきざき・りょう 北大法卒、北大法科大学院修了。2012年12月弁護士登録。横浜の弁護士事務所を経て18年1月から現職(第二東京弁護士会)。予防法務に力を注ぐほか、中小企業法務を中心に利益の最大化に役立つサービスをパッケージ化して提供。対処法務やビジネスの仕組みに対しての提案も行う。33歳。北海道出身。

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