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鹿児島国体は2023年開催か… メンツの競い合いで“綱引き”

 尚美学園大学教授・佐野慎輔

 久しぶりに国体、国民体育大会が話題である。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて今年開催予定の鹿児島国体は中止。代替大会がいつ開催されるのか。各県の思惑も手伝い、“綱引き”が続いていた。

 メンツの競い合い

 先週、佐賀県の山口祥義知事が会見し、内定していた2023年国体の1年延期と鹿児島開催の受け入れを発表した。これに伴い国民体育大会から国民スポーツ大会、略して「国スポ」への名称変更は23年から24年に1年延びる。「最初の『国スポ』は譲れない」とする山口知事の主張に、主催する日本スポーツ協会(JSPO)が応じた結果である。

 しかし、これで一件落着かというとそうではない。国体は施設整備をはじめ、準備に時間がかかる。何年も前に開催県を決め、既に29年まで内定済み。各県は目標を定めて走り出しており、計画が狂うことを嫌う。報道によれば、24年大会を予定する滋賀県の三日月大造知事が佐賀の発表について「事前に聞いていない」と発言。24年に合わせて強化している中学生、高校生選手への配慮を示したという。

 JSPOの伊藤雅俊会長とスポーツ庁の藤江陽子次長が26日、三日月知事を訪問し、延期要請する。強い反発があるわけではないが、どんな返答となるか。鹿児島開催は23年で落ち着くと思うのだが…。

 天皇皇后両陛下のご来臨を仰ぎ、47都道府県の選手団が集う国体は開催自治体の存在感を示す場だといっていい。逆にそれがメンツの競い合いを生む。先の東京オリンピック・パラリンピックが開催された1964年の第19回新潟国体以降、開催県が総合優勝である天皇杯を獲得できなかったのは2002年の高知、16年岩手、17年愛媛の3県に過ぎない。

 国体の総合優勝は各競技で獲得したポイントの加算で競う。開催自治体にはほぼ全競技に予選免除の特典がある。出場すればポイントが獲得できるため、他の自治体より優位に立てる。そこに強化費の集中投下、さらに有力選手を自治体や地元企業で有期限雇用するなどして総合優勝を目指す。もっとも地元開催を終えると予算も規模も、さらに熱気も一気にしぼむ。

 人口1400万人の東京都や922万人の神奈川県に対し、島根県は66.8万人、鳥取県にいたっては55.5万人。大変失礼なもの言いだが、背伸びして優勝を目指すことに何の意味があろう。02年、高知国体当時の橋本大二郎知事が「身の丈に合った運営」を唱えたが、メンツにかき消されたといっていい。

 佐賀・滋賀の突出注目

 国体開催は、地方のスポーツ施設充実に寄与することは疑うべくもない。さすがに一時期の“ハコモノ行政”は影を潜め、既存施設の有効活用が進む。だからこそ、佐賀と滋賀がそれぞれ200億円以上の費用をかけてメインスタジアム整備、大型アリーナ建設に乗り出した突出が目を引く。

 スタジアム・アリーナの充実はスポーツ産業活性化の1丁目1番地。施設拡充は大いに結構な話だが、民間活力の導入、プロスポーツや競技団体などと組んだ後利用計画は綿密に練られているのか。集客対策も含めて気になるポイントだ。ツケは県民が負わねばならない。

 国体は来年が75回、2巡目も中盤に入っている。JSPO国体委員会では再改革に向けた検討が進む。1952年の東北3県国体や53年四国国体のような地域開催、ポイント制の見直しなども進めてもらいたい。

【プロフィル】佐野慎輔

 さの・しんすけ 1954年富山県高岡市生まれ。早大卒。サンケイスポーツ代表、産経新聞編集局次長兼運動部長などを経て産経新聞客員論説委員。笹川スポーツ財団理事・上席特別研究員、日本オリンピックアカデミー理事、早大および立教大兼任講師などを務める。専門はスポーツメディア論、スポーツ政策とスポーツ史。著書に『嘉納治五郎』『中村裕』『スポーツと地方創生』(共著)など多数。

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