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京都の市電「N電」が大阪の霊園へ 秋から法要施設に“再生”

 明治45年から昭和36年まで京都市民の足として親しまれ、引退後は市内の公園に展示されていた京都市電の車両が、大阪府交野市の霊園で法要施設として生まれ変わることになり、26日夜、搬送作業が行われた。霊園では車両を改修し、早ければ秋から利用する予定。関係者は「墓参りに来た子供たちの思い出に残り、将来のお墓の担い手になってほしい」と期待を込める。

 移設された車両は明治45年に製造され、京都駅~北野天満宮の北野線を走っていた通称N電。引退後は大覚寺(右京区)に展示されていたが、昭和44年の大宮交通公園(北区)の開園に伴い移設された。今回、同公園の再整備に伴い、車両を所有する京都市が譲渡先を探したところ、ハピネスパーク交野霊園など3つの霊園を運営する「西鶴(さいかく)」(大阪府交野市)への譲渡が決定した。譲渡先が見つからなかった場合は廃車になっていたという。

 市電は26日午後9時ごろ、大型クレーンでつり上げられ、トレーラーに載せられて同公園を出発。途中、実際に市電が運行していた堀川通の二条城(京都市中京区)や、京都のシンボル、東寺(南区)の前を通るなどして、27日未明に同霊園に到着した。霊園の入り口に設置された市電は、誰でも見ることができる。

 同霊園には周忌法要などを行える施設がなく、利用者からは施設の設置を望む声が高まっていた。同社の山本一郎社長(53)は、主人公と友人との旅と別れを描いた宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」などを念頭に、電車が「別れ」を象徴する場になると考え、昨年初めから法要施設に改修できる電車を探していたという。

 車両は今後、走行時の様子をできるだけ維持するよう車内と外観を整備する。また、新型コロナウイルス感染症に対応するために換気をよくするなどした上で、今年秋には法要施設としてオープンさせる予定。山本社長は、「墓じまいや墓離れが進むなか、将来墓参りの担い手になる子供たちに、電車での法要を印象付け、何度でも墓参りに行きたいと思ってほしい」と話している。

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