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CO2原料からプラや人工肉 東大発ベンチャー、来春からサンプル生産

 世界中で脱炭素社会を目指す機運が高まる中、東京大学発バイオベンチャーのCO2資源化研究所(東京都港区)が、水素をエネルギー源に二酸化炭素(CO2)の資源化に乗り出す。来春から世界に先駆け、CO2を原料に生分解性プラスチックと人工肉の原料となる上質なタンパク質(プロテイン)のサンプル生産を開始、市場に提供しながら2024年度からの量産を目指す。地球温暖化対策と食料問題の解決に貢献する。

 水素細菌を使用

 CO2研は、工場や発電所などから排出されたCO2を食べて高速で増殖する独自の水素細菌「UCDI株」を使ってプラスチックなどの化学品やバイオ燃料、プロテイン、バイオフィーズ(飼料用タンパク素材)の生産に向けた研究開発に取り組んできた。

 現在は東大工学部内(東京・本郷)にパイロット設備を設置。研究用の10リットル培養装置3基で、化学品とプロテインの基礎データの取得に取り組んでいる。産業化に向け、一定の成果を得たことから、来春には工業プラントを小型化したデモプラントによるサンプル生産に移行する。デモプラントは横浜市に設置する予定で、近く決定する。

 微生物の働きで分解される生分解性プラスチック(CO2プラスチック)の生産では、30リットル培養装置を新設。食品包装容器を月間30万個規模で生産し、コンビニ向けに店舗数限定で提供する予定。その後、生産能力を500リットルまで増強する。

 一方、プロテインは東大から3基を移設して専用に生産する。生分解性プラスチックなどの化学品は水素菌の遺伝子組み換え株を使うのに対し、プロテインは水素菌の天然株を使用して培養する。ハムやソーセージ、ハンバーグといった食品の試作品を生産し、世界にアピールする。大手食品企業と共同研究しながら必要な設備を増強していく。

 世界的な人口増加や所得向上により動物性タンパク質食材への需要が増加しているが、飼料不足や水不足の懸念から畜産肉の代わりとなり得る人工肉への期待が高まっている。その原料となるプロテインの生産で食料問題解決に挑む。

 CO2プラスチック、プロテインとも、サンプル生産で市場の反応をみながら24年度には量産を始める予定。CO2プラスチックについては、CO2ポリ乳酸を年間1万トン規模で生産。次いでCO2ポリエチレンの生産に乗り出す。第1期での投資額は30億円を見込む。大林組のほか、複数の企業と連携していくことになるという。スタート時の売り上げは年間50億円規模を見込む。

 こうした化学品生産に当たっては既存の石油化学コンビナートを活用、受電設備や蒸気製造設備などのインフラをそのまま利用する。石油製品の内需縮小で設備休止が相次いでいるが、CO2研が遊休設備を利用することで稼働率向上に寄与。プラントオペレーターの採用により雇用も維持できる。

 コスト・時間大幅減

 湯川英明社長は「石油化学コンビナートを救える。われわれにとってコスト低減と工業化までの時間を大幅に節約できる。ウィンウィンの関係になれる」と話す。国土交通省も協力しており、昨年11月に主要自治体や企業への説明会を実施。これを機に協議を進めており、21年度末までに進出先を決めたいという。プロテインの量産では市場性から海外も視野に入れて検討する。

 CO2を資源に利用する取り組みでは世界のバイオベンチャーがしのぎを削っている。

 CO2研はUCDI株の増殖スピードが格段に速いことから技術力では先頭を走っていると自負しており、湯川社長は「石油ではなくCO2由来のバイオ産業を興す」と意気込んでいる。(松岡健夫)

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