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興行収入前年比3割 プロ野球・独立リーグに支援を!

 尚美学園大学教授・佐野慎輔

 新型コロナウイルス感染拡大のあおりを受け、変則状態で開催されてきたプロ野球も気がつけば終盤を迎えている。開幕前の状況を考えれば、よくぞここまでたどり着いたと思う。

 関西大学の宮本勝浩名誉教授が日本野球機構(NPB)傘下12球団の経済損失を約1423億円と試算。9月末に公表された。観客数が昨シーズンの2割程度にとどまる見通しを反映した数字である。

 開幕は例年より2カ月以上遅れ、7月9日まで無観客試合が続いた。10日から上限5000人、9月19日から収容人員の半数までに制限が緩和されたが、今季これ以上の緩和は望めまい。宮本名誉教授は今季の12球団総観客数を約555万人とみなし、昨季約2564万人の総観客数と比較。昨季を約1800億円と推定した総売上額が、今季は約377億円にとどまると弾き出した。

 興行収入前年比3割

 厳しさがより切実なのは規模の小さい独立リーグ。NPBに属さず、独自に運営するプロ野球リーグである。2005年創設の四国アイランドリーグ(4球団)にルートインBCリーグ(12球団)、さわかみ関西独立リーグ(4球団)、北海道ベースボールリーグ(2球団)が野球振興、地域振興の一翼を担う。

 最も規模の大きいBCリーグでも1球団当たりの年間予算は平均約1億3000万円程度。NPBの100分の1といっても過言ではない。主な財源は入場料収入とスポンサー収入。試合が開催できない状況は球団経営に直結する。頼みのスポンサーもコロナ禍で拡大は望めず、むしろ企業の撤退もみられた。

 縁あって、故郷の富山サンダーバーズの非常勤取締役を務めている。取締役会に上がる数字は例年に増して厳しい。観客数は前年の半分以下。もちろんコロナ対策を万全に行い有人試合を挙行しているが、「3密」など憂える必要もないことが寂しい。

 興行収入は前年比3割、物販収入も5割程度に落ち込む見通し。スポンサー協賛は前年に届かず、唯一、力を入れてきた富山県内のスタジアムのフェンス広告営業が支えとなった。一方、支出では試合数の減少に加え、リーグ方針による近隣球団との試合が増えたことから旅費・交通費が減少、赤字抑制になったことが逆に悲しい。

 健康事業で生き残り

 「通常通り試合が実施され、スポンサー獲得に弾みをつけたい」。永森茂社長はコロナ禍の収束に期待を寄せる一方、新たな財源確保に知恵を絞る。コロナ騒動の中、富山に本店を置くスポーツ用品メーカーのゴールドウインに依頼したロゴマーク付きマスクや地元企業と組んだフェースガード、あるいは地場産業の高岡銅器と共同開発した銅製の非接触グッズの製作・販売で一息ついた。しかし、恒久的な財源ではない。

 いま永森社長が力をいれているのが、姿勢分析システム「シセイカルテ」を活用した健康事業。東京大学が開発に携わったシステムで、姿勢をタブレットで撮影し、筋肉のありようや姿勢の歪(ゆが)みなどを数値化、見える化する。

 その数値を基に選手たちが指導している野球教室、トレーニング教室などを通して地域の健康増進に役立たせていく。もちろん「健康」を中核とする事業化が狙いだ。近く、クラウドファンディングにも乗り出す。「生き残り策に知恵を絞らなければ」と永森社長は話す。

 独立リーグはロッテの角中勝也選手や中日の又吉克樹投手などNPBに人材を送り出し、NPBを目指す若者の受け皿ともなっている。富山からは過去13選手を輩出。今年、ロッテで活躍する和田康士朗選手もその一人だ。

 人材育成、地域への貢献など独立リーグの存在意義は決して小さくはない。NPBとの連携も含め、なんとか苦境下に力を貸してもらえないだろうか。

【プロフィル】佐野慎輔

 さの・しんすけ 1954年富山県高岡市生まれ。早大卒。サンケイスポーツ代表、産経新聞編集局次長兼運動部長などを経て産経新聞客員論説委員。笹川スポーツ財団理事・上席特別研究員、日本オリンピックアカデミー理事、早大および立教大兼任講師などを務める。専門はスポーツメディア論、スポーツ政策とスポーツ史。著書に『嘉納治五郎』『中村裕』『スポーツと地方創生』(共著)など多数。

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