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苦渋の決断、国の航空産業育成に打撃 国産ジェット事実上凍結

 三菱重工業が国産初のジェット旅客機「スペースジェット(旧MRJ)」の事業を事実上凍結する方向で最終調整に入ったことが分かった。新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んでいる航空需要の早期回復が見込めないと判断した。官民一体で取り組み、巨額の開発費を投じたプロジェクトの頓挫は、同社の経営だけでなく、国の航空産業育成にとっても大打撃となりそうだ。

 三菱重工は23日、「開発の凍結を決定した事実はない」とする一方で、「さまざまな可能性を検討していることは事実」とのコメントを発表した。今後の事業方針は、30日公表の中期経営計画で示す考えだ。

 三菱重工はすでに今年度の開発費を前年度比の半分以下となる600億円に減らした。子会社で事業を手掛ける三菱航空機(愛知県豊山町)の従業員も約2000人から半分に減らしたうえで、さらなる体制縮小を検討している。

 スペースジェットは平成20年に事業化を決定したものの、これまで6度にわたり納入を延期。当初は25年としていたANAホールディングスへの初号機納入は現在、「令和3年度以降」となっている。

 開発費は1兆円規模まで膨らんでおり、三菱重工の財務を圧迫。同社の2年3月期連結決算は、本業のもうけを示す事業損益が20年ぶりの赤字に転落した。このため投資家は凍結の報道を歓迎。23日の同社株は、前日比6・56%高の2370円で取引を終えた。

 一方、「YS11」以来、約半世紀ぶりの国産旅客機となるスペースジェットの開発には国が500億円を支援している。梶山弘志経済産業相は23日の閣議後記者会見で「完成旅客機事業として重要なプロジェクトだ。関係者の尽力に期待したい」と述べた。

 三菱重工は今後、需要動向を見極めた上で事業再開の時期を探るとみられ、運航に必要な国の認証取得に向けた活動は続ける。だがコロナ禍の影響は大きく、航空需要の回復には数年はかかることは必至。凍結の状態が長引けば事業撤退に追い込まれる恐れもある。(井田通人)

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