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仮想移動体通信事業者、値下げの波で窮地 大手が価格差縮めれば優位性喪失

 政府が携帯電話大手の料金値下げ圧力を強める中、格安スマートフォン事業を運営する仮想移動体通信事業者(MVNO)が窮地に立たされている。価格に注目が集まることでMVNOが意識されるメリットは期待できるが、大手が大幅な値下げをすれば価格差が縮まり、料金が安いというMVNOの優位性が失われるからだ。各社は独自の生き残り策を打ち出すが、経営が立ちゆかなくなれば中長期的な市場競争を阻害する結果にもなりかねない。

 MVNOは携帯電話大手の回線を借りて、サービスを提供する事業者。自前の設備を持たないため、料金を安く設定できる。一方、昼休みや大人数が集まる場所など、回線が混雑すると通信速度が低下する欠点がある。しかも、昨年から続く大手の値下げやMVNOの最大手だった楽天モバイルが、2980円という割安な自前回線サービスを開始したことで、各社が対抗策を打ち出している。

 日本通信は時間制限のない「かけ放題」とデータ容量3ギガバイトで月額2480円(税別)のプランを7月に開始。大手では1ギガ1000円かかるデータ量の追加購入も250円に抑制。UQコミュニケーションズの「UQモバイル」は親会社のKDDI(au)が10月1日に統合、KDDIの格安ブランドとして運営されることになり、KDDIから他社のMVNOに乗り換える顧客の引き留めをねらう。

 しかし、民間調査会社のMM総研によると、MVNOの契約数は増えているが伸びは鈍化しているという。しかも政府の値下げ要請を受けて大手は20ギガで5000円以下という新プランを検討中だ。MVNO各社のプランは5ギガで2000~3000円程度。価格差が縮まるが、これ以上の値下げは困難なのが実情だ。

 MM総研の担当者は「MVNOは顧客満足度が高く、シェアが高まれば自然と価格競争が起こる」とMVNOの存在意義を強調する。政府には大手に携帯料金の引き下げを迫るだけでなく、MVNOへの乗り換えを促す対策も合わせて実施することが求められそうだ。(高木克聡)

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