マネジメント新時代

ガソリン車専用は厳しく…自動車部品メーカーの生き残り策

 日本電動化研究所代表取締役・和田憲一郎

 新型コロナウイルスの影響にて、事業環境が悪化しているせいか、自動車部品産業から新規ビジネスの相談を受けることが多い。特にガソリン車専用の自動車部品メーカーが厳しいように思える。そのような中、既に何かテーマを決めて取り組んでいる場合は良いが、まだ何も決まっていない場合は、相手の得意分野を見ながら、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)として必須である「エネルギー・マネジメント」や「サーマル・マネジメント」に関する開発を推奨している。

 エネルギーを効率制御

 エネルギー・マネジメント、サーマル・マネジメントとは何か。EVでは、エネルギー源であるバッテリーで、走行機能や12ボルト系の電装系機器への電力供給など、全ての機能を補っている。しかし、バッテリー容量には限りがあるため、各機能を有効活用する手段が必要になる。それがエネルギー・マネジメントだ。一方のサーマル・マネジメントは、EV基幹部品(モーター、インバータなど)で多くの熱を発生するため、これを効率良く制御したり、走行以外に多くのエネルギーを使用する冷暖房機器の効率向上を図るものだ。

 分かりやすい例で説明すると、これまで走行距離300キロであった車種を、新型車から400キロに伸ばしたいと営業・企画部門から要望された場合、プロジェクト責任者はどうするのであろうか。

 基本的なアイデアとして、バッテリー搭載個数を増やし、エネルギー密度を向上させたバッテリーを使用することが考えられる。またインバータなどの変換効率向上などもあるであろう。プロジェクト責任者は、これら多様な数百のアイデアを抽出し、設計、試験部門と一緒に開発を進めていく。

 しかし、抽出したアイデアを実行しようとすると、コスト、開発日程、信頼性確保など、相反する内容がほとんどである。わかりやすい例として、EV走行距離を伸ばすために、低転がりタイヤを採用しようとする。いろいろな種類のタイヤを検討するものの、EV走行距離が伸びる低転がりタイヤは摩擦係数値が低いことから制動距離が伸びてしまう。

 もちろん、車両には法規制値がある。また通常の路面だけでなく、雪など凍結した道路はどうか、ユーザーからの違和感、不安感はないかなど多様な方面から検討する。しかし、このような場合、特殊なコンパウンドを入れるため、コストが大幅に上がるとともに、開発や試験期間がプロジェクト日程に間に合わないなどの問題が生じる。プロジェクト責任者は各部門と協力し、現実的な解を見つけていくのである。

 多様な広がりの可能性

 プロジェクト責任者からみれば、車両開発時に、毎日頭を抱える状況が続いており、筆者の経験でも、これに多くの時間を費やしていた。そのため、部品メーカーからのエネルギー・マネジメント、サーマル・マネジメントに関する提案は、喉から手が出るほど欲しいものである。冷暖房システムという大きなものだけでなく、小さな部品、システムの改良でもかまわない。

 そうなると、新規ビジネスはどの分野を開拓しようかと考えると、人工知能(AI)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、さらには自動運転などの分野があるが、これまで自動車部品を作ってきたメーカーからすれば、この分野が取り掛かりやすいように思われる。

 また、新商品を開発することができれば、これまでの取引先だけでなく、日米欧中のEVプロジェクト責任者が困っていることから、これまで取引がなくても関心を寄せるのではないだろうか。

 そして、この分野の新規商品は、これまでにない商品であればあるほど、自動車部品メーカーによる価格決定権が大きくなる。さらにはこの悩みは一過性でなく、将来も続くため、長いビジネスにつながっていくであろう。大型部品、小型部品、電子部品、材料など、多彩な分野があり、まだまだ開発の余地がある分野と思われる。

【プロフィル】和田憲一郎

わだ・けんいちろう 新潟大工卒。1989年三菱自動車入社。主に内装設計を担当し、2005年に新世代電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」プロジェクトマネージャーなどを歴任。13年3月退社。その後、15年6月に日本電動化研究所を設立し、現職。著書に『成功する新商品開発プロジェクトのすすめ方』(同文舘出版)がある。63歳。福井県出身。

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