「作業着ならワークマン」のイメージが定着していたワークマンが、新業態ワークマンプラスを出店し、大成功した。その仕掛け人、土屋哲雄さんが語る成功のきっかけとなった数々の「異常値」とは-。
「異常値」を見逃すな
既存製品の成長カーブが止まり、新製品を開発することになったとする。
新製品やビジネスモデルのヒントを得るときに有効なのが、異常値を検知することだ。異常といっても事故ではない。
社内にとっての非常識を非常識として片づけず、現場で何が起きているのかを調査してみるのだ。通常のデータとはかけ離れたものを見つけたら、じっくり観察してみる。たとえば製品開発なら、通常は絶対にこないお客様がいないか、通常とはまったく異なる使い方をしていないかを探す。
地域別の戦略を立てるなら、まったく売れない地域や反対によく売れている地域はないかを調査する。一般的に異常値は排除しがちだが、ここにブルーオーシャン市場拡張のヒントがある。
あるとき異常な売れ方をする製品が現れた。
ワークマン最初の「異常検知」は……
最初は「防水防寒スーツ」だった。
2016年、建設作業者や交通誘導員などの屋外作業者向けにつくった防水防寒ウェアが突然売れ出した。売切になる店舗が続出しているので現場に見にいくと、購入していたのは一般のバイクユーザーだった。
これは、もともと屋外の過酷な環境で働くための作業服だ。防水性・防寒性が高く、同時に汗を逃がす高透湿性も備え、さらに軽量で動きやすい。それが冬場のツーリングに最適と口コミで広がっていった。夜間作業着用に目立つカラーにしたのも、一般ライダーにとっては受け入れやすかったようだ。しかも、価格が上下組で6800円(税込)と安い。一般的にバイク用の防水性を持つ防寒着は数万円はする。
「ファイングリップシューズ」(税込1900円)も不思議な売れ方をした。