講師のホンネ

新型コロナと共生、奈良のシカに学ぶ

 新型コロナウイルスの影響から外国人の観光客が減り、「奈良公園のシカ」も影響を受けています。それは普段、観光客からもらっていたシカせんべいを食べられなくなり、痩せ細ったシカが続出しています。奈良公園の周辺には、1300頭ほどが生息しています。(上野恵利子)

 昨年までは、奈良公園を訪れる観光客は年間1300万人。せんべいの売り上げは2000万枚に上ります。シカの保護施設に収容されている400頭を除く900頭ほどが大部分を消費しており、1頭当たり1日60枚以上を食べていた計算です。

 せんべいは1枚3~4グラム程度で、1日に約5キロの草を食べるシカにとってはおやつです。以前は、土産物屋の周囲で観光客を待ち構えるシカでごった返すのが日常でした。ところが、コロナ感染拡大以降、観光客は姿を消し、せんべいの売り上げも激減、シカの生活にも変化が生じました。

 そんな中、多くのシカは野生に戻りました。草を求めて公園内を歩きまわり、日中は芝生に横たわって休息しています。反芻(はんすう)動物であるシカは、飲み込んだ草などを口に戻し、再び咀嚼(そしゃく)することで栄養を吸収しており、休息は反芻をする大切な時間です。そんなシカの糞(ふん)は黒くて丸い。コロナ禍以前の公園には緩い状態の糞があちこちに落ちていました。おやつを取らなくなったおかげで、むしろ健康になったようです。

 一方、人から餌をもらえなくなったことで痩せ細ったシカもいます。観光客が多かったスポットをうろつき、閉鎖している土産物屋の前でせんべいをくれる観光客を待っているのです。人から餌をもらって食べるのが当たり前になり、環境の変化に適応できない様子です。これは人間も同じです。コロナと共生するために、環境の変化に適応した働き方を模索して行動する人もいれば、いつまでもコロナ以前のままの人もいます。

 例えば飲食店では、すぐにテークアウトや宅配を主とする営業に変えて、以前よりも売り上げが増える店もあれば、いつまでもコロナ前のような営業方式に固執して、政府の対応に文句を言うだけで売り上げがどんどん減ってしまう店もあります。今やれることを探して行動する人が、コロナと共生して生き抜いていける人なのだと思います。

【プロフィル】上野恵利子 うえの・えりこ 1965年大阪生まれ。3人の子供を育てながら42歳で看護学校へ入学し資格を取得する。精神科の看護師として働きながら「日本アンガーマネジメント協会」アンガーマネジメントファシリテーターとしても活躍中。心匠セラピストとして心理カウンセリングを行うなど、心の元気を回復するサポートを行っている。

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