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デジタル化へ問われる具体策 アイデア4000件、実現にハードルも

 政府の作業部会が26日、来秋に新設されるデジタル庁の概要を示し、今後は行政や社会のデジタル化に向けた具体策を一つ一つ検討していくことになる。国民の意見を取り入れるため、政府が10月に開設したインターネットサイト「デジタル改革アイデアボックス」にはすでに4千件を超える意見が寄せられており、政府も前向きに取り組んでいく方針だ。ただ、選挙のネット投票など実現に向けてはハードルが高いものもあり、政権の本気度が問われそうだ。

 「(人気が)上位のものはできるだけやっていく」。アイデアボックスに寄せられた意見について、平井卓也デジタル改革担当相はこう繰り返してきた。

 背景にはデジタル社会は国民の理解がなければ実現できないとの考えがある。デジタル化は、ともすれば行政による監視社会とも受け取られかねないからだ。

 そこで10月9日にアイデアボックスを開設。アイデアを投稿できるだけでなく、投稿されたアイデアへのコメント記入や、「賛成」や「反対」といった意思表示が可能で、国民から支持を集めているアイデアもランキング形式でみることができるようにした。

 今月17日には、最も支持を集めている「PPAP」というセキュリティー対策の廃止という提案を採用する考えを表明するなど、国民の意見が政策判断につながる事例も出てきている。

 PPAPは暗号化した添付ファイルをメール送信した際、直後に別のメールでパスワードが自動送信される仕組み。誤って違うアドレスに送信してもパスワードまで一緒に送信されることから、「(誤送信対策など)セキュリティーのためになってない」(平井氏)のだという。他にも国家資格のマイナンバーカードへの登録や、自治体ごとに行っているシステム開発の見直しなど、すでに一部実施を決めたものもある。

 一方で、支持を集めるアイデアには、実現に向けたハードルが高いものもある。例えば選挙のネット投票は、票が売買されるなど不正への懸念から反対意見も多い。不正防止には本人確認ができるマイナンバーカードの普及が不可欠ともいわれており、政府関係者も中長期の検討課題との認識だ。国際化や分かりにくさの解消の観点から提案されている、和暦をやめて西暦に統一するというアイデアも、伝統を重んじる立場からの反発は大きそうだ。(蕎麦谷里志)

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