シリーズ エネルギーを考える

プロセスを考えながら、上手にシフトしていくことが大切 (1/2ページ)

 見えないものを見る力必要 作家・神津カンナさん

 -神津さんはエネルギーや環境問題を、生活者の視点から考えることを呼びかける活動を続けています。芸術一家に生まれた神津さんがエネルギー・環境問題に関心を持たれたきっかけは何だったのですか

 「最初は父親(作曲家の神津善行さん)の影響だと思います。父は作曲家ですがものの考え方は理数系的で、エネルギー問題に大変興味を抱き、かなりの知識を持っていました。父がクラシックコンサートを開催する際、各地の電力会社のホールを利用することがたびたびありました。そうした関係から数多くの発電施設などを視察する機会があり、父は帰宅するとエネルギーについて興味深い話をよく語り、家庭内でエネルギーについて話し合うことは自然な流れでした。1980年頃にはテレビの核燃料サイクルに関する特集番組に神津家全員で出演する機会があり、原子力関連施設の取材や猛勉強をしました。それ以来、国内外にある電力安定供給を支える設備や現場を見て回る機会が増え、世の中で話題になってもいないことを一生懸命考えている人たちがいることや、世の中の多くの人が思っていることと現実にはギャップがあることを知り、エネルギーに強い興味を持つようになりました」

 -東日本大震災から10年近くが経過し、最近のコロナ禍にあってはエネルギー問題への生活者の関心は極端に薄れています

 「震災の時に電気は案外いろんなところに使われていることを、初めて知った人も多かったと思います。停電だというので、あわててテレビをつけたという人もいたというくらいですが、情報も電気がなくては得られなくなっています。あの時は東京も夜は真っ暗で、明かりがともることによる安全や安心、心の安らぎとかも、電気によってもたらされていることに改めて気づかされました。電気がさまざまなところに毛細血管のように張り巡らされていて、それが私たちの暮らしを支えているという事実を実感できたのは貴重な経験だったと思います。しかし、のど元過ぎるとすぐ忘れてしまうのも人間、もう一度電気のある暮らしのありがたさを思い出していただきたいと思います」

 -コロナ禍でも、当たり前と思っていたことが実は当たり前でなかったことに気づかされました。私たちは今の現実から何を学ぶべきなのでしょうか

 「人間は大して進歩していなくて、自分たちの力に限度があることを知るべきだと思います。コロナ対策は今も、マスク、手洗い、密を避けるなどですが、これは約100年前に流行した『スペイン風邪』のときと大きく変わっていません。技術の進歩で便利にはなりましたが、人間自体は進歩していないことを自覚する契機になったと思います。先日、秋田県の猪苗代湖から取水している安積疏水(あさかそすい)に行き、初めて知ったことがあります。日本全国の疏水など水路の総延長は約40万キロに達し、地球約10周に匹敵するということです。その水路は見えないので、私たちは存在にすら気づきません。電気も同じで、私たちは家で電気が使えるのが当たり前と思っていますが、そうなるまでには先人の知恵や努力があり、今も水や電気をつくったり、送っている人や設備があるわけです。そうした当たり前を支えている見えないものを見る力を養っていくことが重要です」

 理想論だけでは実現しない

 -ポストコロナの暮らしとエネルギーはどうなるとお考えですか

 「まず、夜寝て朝起きたら問題の解決した世界が広がっているという幻想からは早く脱却しなければいけないと思います。エネルギーでは再生可能エネルギーも同じです。再エネは地球を救ってくれる技術の1つであり、できるだけ拡大していくべきというのはその通りですが、明日すぐに実現するものではないということを冷静に知るべきだと思います。地球温暖化問題への注目度が高くなる中で、最近では発電時にCO2を排出しない原子力を少しでも再稼働した方が良いのではないかという意見も聞かれるようになり、自然エネルギー開発に対しては手放しでは歓迎できないということも少しづつ理解されてきました。世界的な脱炭素化の流れの中で石炭火力発電所の廃止が叫ばれていますが、老朽化して効率の悪い設備は閉鎖しても、不安定な自然エネルギーが増加した際の調整に有効な高効率設備まで閉鎖してしまっていいのか、あるいは原子力も核燃料廃棄物の最終処分地を決めないまま先に進めることを問題視する人もいます。理想は理想として持ちながら、段階を経て現実的に進めていくべきと思います」

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