昨年の暖冬から一転して気温低下が予想される今冬。自宅で暖かく過ごすための商品やサービスに注目が集まっている。新型コロナウイルスの感染再拡大に伴い、冬場のテレワークに備えた新たな需要も生まれ、これまで販売が伸び悩んでいた小売りや各メーカーが新商品開発などで“一芸”を競っている。
「昨年も販売している商品だが、冬でも快適なテレワークを望むニーズが高まった」。イオンリテールの担当者は、想定以上の売れ行きに声を弾ませる。
人気を集めているのは、椅子に座ったまま温まるテーブルタイプの「高脚こたつ」。側面にコンセントやUSBコネクターを装備する仕様が受け、9月中旬の発売からインターネットなどで話題に。こたつ布団と合わせて3万円を超える価格設定にもかかわらず「発売から2週間で品薄になった」(担当者)という。
背景にあるのは、見込まれる「寒い冬」だ。気象庁の3カ月予報では1月の平均気温が東日本で「ほぼ平年並み」、西日本は「平年並みか低い」という。小売りにとって一般的に「寒さ=商機」で、日本チェーンストア協会が発表した10月の全国スーパー売上高でも衣料品が13カ月ぶりの前年同月比プラスに転じたが、気温低下でパジャマや肌着が売れたためという。
加えて今年は、新型コロナの影響で外出を控え、自宅で過ごす生活様式が定着したことが売れ筋の変化をもたらしている。中でも好調なのは、冬場のテレワークを意識した商品だ。
ビックカメラでは好調な暖房器具のうち、エアコンより空気が乾燥しにくいオイルヒーターが前年の約1・2倍の売れ行きのほか、加湿器の販売もデスク周りに置くタイプを中心に約2・7倍に拡大。「暖かさだけでなく、快適さや体調管理を重視する傾向がある」(広報担当)という。
定番の冬物衣料でも、売れているのは外出用のコートでなく、セーターなど室内で重ね着するタイプだ。高島屋は自主企画商品のカシミヤセーターなどの売り上げがネット通販で前年の約1・6倍に急増。普段使いができるよう、洗濯機で洗えるように改良したことも人気を高めている。
フロンティア・マネジメントの山手剛人シニアアナリストは「自粛モードが継続する一方、コロナ禍をきっかけにした生活様式の変化が新たな需要を生み出している」と分析している。
(佐久間修志)