未来への羅針盤

エスティーム、女性向け衣服「overE」

 “胸が大きい悩み”に寄り添う

 大きな胸に憧れる女性は少なくない一方で、大きな胸に悩む女性も多い。自分の体形に合う服が少ないからだ。そんな胸が大きいという問題に寄り添うのがアパレルベンチャーのエスティーム。会社名よりもブランド名の「overE(オーバーイー)」の方が知られているかもしれない。その名の通りEカップ以上の女性のためのブランドだ。

 実体験もとに起業

 食生活の変化などで体形が大型化する女性が増え、胸が大きいことは身近な悩みになりつつある。女性下着メーカー大手のトリンプ・インターナショナル・ジャパンの調べによると、集計を始めた1980年は女性の6割近くがAカップだったが、今では4人に1人がEカップ以上になった。

 overEの立ち上げには、社長の和田真由子さんの実体験が深く関わっている。大学でいじめを受け、入学から3カ月で通うのをやめた。いじめられた原因は自分にあると思い込み、「人目が気になって、怖かった」。次第に自分の外見に執着していき、毎日、化粧をしては落とすことを繰り返した。クローゼットを開けるものの、胸が大きい自分に合い、周囲も羨(うらや)むような服があるわけでなく、「着ていく服がない」とふさぎ込む。結局、約2年半自宅に引きこもった。

 その後、憧れのスポーツ選手の追っかけをするようになり、それがきっかけで大学を中退。スポーツ雑誌のライターになった。そんなある日、職場に向かう電車の中で着ていた服のボタンが外れ、胸元が「全開」に。そのことを別の乗客から指摘された。和田さんは「顔から火が出るほど、恥ずかしかった」と振り返る。

 かつて着ていく服がないことが外に出ていく足かせになったときのことも重なった。「胸が大きいということだけで、後ろめたい気持ちになってしまう。何とかこの状況を変えたい」。これが起業の出発点となり、2016年8月に会社を設立した。開発資金はクラウドファンディングで集めた。

 フィット感を表現

 大量生産の既製服でも大きめのサイズのものは存在するが、胸の部分に生地が持っていかれるため、着丈が短くなりがちだ。無理してボタンをかけると、ボタンが取れてしまい、周囲から好奇かつ冷ややかな視線を浴びてしまうことにもなる。

 逆に着丈に合わせて大きいサイズを買うと、今度は腰回りの生地が余って、太って見えてしまう。日本人より一回り大きい欧米の服を取り寄せもしたが、同じサイズの表記でも日本のものと異なることが多かった。

 そこで和田さんは、バストと背丈を組み合わせた独自のサイズ表を作り、体にフィットしたシルエットが出せるようにした。広がりやすいボタンとボタンの間には2つの隠しボタンを付けて解決した。ジャケットやスーツにはボタンの裏に隠しフックを取り付けるなど、服にさまざまな工夫を施した。シャツだけでも型の作り直しは5回、細かなサイズ合わせなど微調整は4回にも及んだという。これらにより、胸を強調しすぎず、かつ着崩れをしにくい多くの服を実現した。

 今は、東京・銀座に予約制の試着店舗を構えて情報収集するだけでなく、ユーザー同士で服に関して意見交換できる「overE女子会」を定期的に開き、ユーザーの好みの変化をキャッチする。これを新商品の開発に生かしている。

 男女問わず、さまざまなコンプレックスから新しい一歩を踏み出せない人がいる。和田さんが手掛けた大きな胸に悩む女性に寄り添う衣服から、「胸を張って生きる」ことの大切さが伝わってくる。(松村信仁)

                  ◇

【会社概要】エスティーム

 ▽社長=和田真由子氏

 ▽本社=東京都台東区松が谷4-18-1 ラミューズ松が谷203

 ▽設立=2016年8月10日

 ▽資本金=150万円

 ▽従業員数=16人

 ▽主な事業=女性向け衣料品企画、開発、販売

 ▽ミッション=胸をはって生きていく、運命の1枚を届ける

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