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仙台市の公営ガス事業民営化 課題は巨額の維持費と安定サービス (1/2ページ)

 【深層リポート】仙台・公営ガス事業民営化

 政令指定都市で唯一公営ガス事業を行っている仙台市が、令和4年度内に同事業を民営化するため、事業を譲渡する事業者を公募した。10月29日に締め切られ、最低でも400億円を上回る大規模な譲渡になる見通しだ。事業者の選定や安定したサービス継続などが今後の課題となる。

全国最大規模

 仙台市ガス局がガスを供給しているエリアは、仙台市と近隣の7市町。利用者数は業務用なども含め約34万戸で、ガスの販売量は約2億8千万立方メートル、販売額は年間約311億円に及ぶ(いずれも昨年度)。今年4月1日現在、全国には20の公営ガス事業者が営業を行っているが、その中で最大の規模を誇る。企業にとっては大きな魅力だ。

 東北電力は10月28日、公募に参加したことを明らかにした。同社の樋口康二郎社長は「電気とガスをセットで提供するなど、さまざまなサービスが可能となる。セットによる(利用者側の)手続きの効率化も利点だ」と参加の理由を説明した。

 東京ガスも翌29日に参加を表明。同社担当者は「都市ガス事業のノウハウの活用という面で貢献できることに加え、生活周りのサービスも仙台で展開することで、市民の暮らしに価値を提供できる」と話した。

 仙台市のガス事業は、大規模であるがゆえに設備の維持管理にも巨額の費用がともなう。ガス事業は昨年度、約28億円の黒字だったが、累積債務は約38億9千万円にのぼる。人口減少が予測される中で、公営で十分なサービスを維持し続けることができるかが課題となり、これまでにも民営化を検討してきた。

 平成20年に企業の公募を実施したが、この年の9月にリーマン・ショックが起き経済状況が悪化。唯一応募していた東京ガスなどの企業グループが21年に辞退した。23年には東日本大震災が発生し、設備の復旧が優先され、民営化のタイミングを逸した。29年に都市ガスの小売り完全自由化が始まり、民営化をめぐる議論が再び動き出した。

 今度はコロナ禍

 ところが今年、再び民営化に水を差しかねない新型コロナウイルス禍が生じた。

 ガス事業の民営化に関して市が設置した有識者委員会は8月、郡和子市長に事業者の応募資格などを答申。この際、橘川武郎委員長(国際大大学院国際経営学研究科教授)は「エネルギー業界の企業の経営への影響は軽微であることなどから、民営化を長期にわたり先延ばしにすべきでない」と述べ、郡市長も「市、市民にとって価値ある民営化になるよう進めていく」と応じていた。

 市は9月2日から「公募型プロポーザル方式」での事業者の公募を開始。答申を踏まえ、最低譲渡価格を400億円とすることや、事業譲渡後5年間はガス料金を引き上げないことなどを条件とした。来年5月末までに優先交渉権者を決定する。

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