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バス路線再編の難しさ 市民の足、守るはずが足元に乱れ

 全国の地方都市で再編が進むバス路線。地域住民の足を守るものとして円滑な計画推進が求められるが、利用者減や採算悪化などの状況下でもあり、やり方を間違えれば再編自体がおぼつかなくなる。岡山市はその一つ。新規参入した業者をめぐり訴訟沙汰になったかと思えば、その路線を含む再編案でも、市は既存業者から「テーブルにつかない」などと反発を受けており、一筋縄でいかない再編の難しさを浮き彫りにしている。

 「紛争路線」を再編も…

 10月12日に開かれた岡山市の公共交通網に関する法定協議会。ここで市が提示した案が波紋を広げた。JR岡山駅から東方向の市街地に伸び、集客の多い“ドル箱”路線「益野(ますの)線」の廃止を含めた市内の重複路線の整理、改編案だ。

 廃止が示された益野線は、そもそも紛争の火種となっていた。市内でタクシーなどを運行する八晃運輸(岡山市)が平成30年4月に格安料金で参入。ほぼ同じルートで走る両備バス(同市)が長年、このルートの黒字で過疎地域の赤字を補ってきており、新規参入に反発した両備グループ(同市)は昨年、八晃に対する国の認可の取り消しを求めて訴訟を起こした。

 1、2審で敗訴した原告側は上告中だが、こうした中、益野線の廃止案が示されたのだ。両備グループの小嶋光信代表は「今まで大変厳しい思いをしてきたこともあり、非常に驚いている」とコメントした。

 「不信任を出す」

 だが、これで話は終わらなかった。市の案では益野線が廃止となる八晃について、同社の要望をいれる形で、新たにJR岡山駅東口に乗り入れ、北部の国立病院行きを含めた新ルートに参入することが盛り込まれた。

 国立病院のルートは別の2社がすでに運行していたこともあり、既存の運行事業者は反発。「路線再編は拙速にならないように。当事者同士で協議する必要がある」。11月9日、八晃を除く路線バス会社8社の代表らが大森雅夫市長に対し、案から八晃の新規ルート参入を削除するよう申し入れた。

 こうしたゴタゴタには、市側と事業者側の意思疎通が欠けている様子が透けてみえる。市の案には、市中心部の初乗り運賃の値上げが含まれ、計画の実施で各社全体で年間4億2800万円の増収効果があると試算したが、8社は試算を「需要の前提が不明確」と一蹴した。

 市は来年1月の協議会で各社の同意を得て2月市議会に提案し、来年度後半から再編に着手する算段だった。しかし8社は実務者レベルの協議開催を要求。小嶋氏は「対応がなければ協議会に不信任を出し、1月には私どもはテーブルに付かない」と迫っている。

 競合他社間で共同経営

 折り合いがつかないままリミットが近づく岡山市の路線バス再編案。各地でもすでに再編が進んでいる路線バス業界だが、新型コロナウイルス禍で交通各社は大幅な減収を余儀なくされており、今後再編のスピードが加速することも想定される。

 広島県では、一定条件を満たせば各社間の調整を独占禁止法の適用除外とする特例法(11月末施行)を活用し、来年度にも競合他社間での「共同経営」に乗り出す。熊本県でも今年1月、熊本都市バスなど5社が路線バス事業を共同経営することで合意した。都市部の過当競争で周辺部の赤字路線に悪影響が出るのを防ぐねらいがある。岡山市も同じ共同経営の枠組みの活用をはかるが、このままでは見通しは暗い。

 大森市長は「計画は市民の足を守るためのもの。各社の足並みをそろえていかなくてはいけない」と話しており、調整が急がれる。

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