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東京五輪、コロナ禍続きで関心どうなる? 

 尚美学園大学教授・佐野慎輔

 代表のいすが2つあったなら…。素直に思った。柔道男子66キロ級の東京五輪代表決定戦。阿部一二三、丸山城志郎両選手の24分間にわたる壮絶な闘いは、テレビからユーチューブに切り替え、珍しく真剣に見入った。

 両選手のまなざしの強さ、隙を与えない動き、そして会場の張り詰めた空気。試合の重さが、まるでそこに居るかのように画面から伝わった。

 無観客試合は新型コロナウイルス感染拡大による。いや、この代表決定戦こそ、コロナ禍でなければあり得なかった。

 ここまで緊張と体調を維持し続けた2人の選手の強い精神力に、改めて敬意を表したい。

 身体活動の実施率減

 先週、笹川スポーツ財団(SSF)が10月に実施した今年度2回目の「新型コロナウイルスによる運動・スポーツへの影響に関する全国調査」の結果がまとまった。6月の第1回調査に続く“定点観測”で、全国の18歳から79歳までの男女5000人を対象にコロナ禍による身体活動やスポーツ指向の変化を調べた。

 緊急事態宣言の真っただ中に実施した前回調査(2~5月対象)では「運動・スポーツを行っていない」は49.9%。2回目(6~9月対象)では55.2%と5.3ポイント上昇している。感染者が減少、プロ野球やJリーグが無観客ながら実施された時期である。休業していた運動施設も復活し、身体活動がしやすくなった。それにもかかわらず減っているのはなぜか。

 SSFシニア政策アナリストの澁谷茂樹氏はこう分析する。

 「梅雨の長さと今年の降雨量の多さ、9月の残暑の厳しさが外での活動意欲をそいだ部分はある。同時に経済活動が再開されて日常生活が戻り、時間がとれなくなったこと、緊張感が薄れてほかの楽しみも始まったことも考えられよう」

 私自身は自分の体験から、身体を鍛えなおそうと考えた人が「飽きた」のだとも考える。

 ちなみに実施した身体活動の上位はウオーキング、散歩、筋力トレーニング、体操と変わらないものの、いずれも実施率は減少。特にウオーキングは4ポイント、散歩は6.2ポイント下げた。一方、ゴルフや水泳が上昇。施設再開効果が指摘できよう。登山も増えた。

 スポーツ観戦では直接観戦した人の割合は前回16.4%から9.0%に減った。無観客試合、入場制限が要因であり、コロナ感染への不安は依然続く。

 直接観戦を補完するテレビやインターネットによる観戦ではプロ野球、Jリーグ、大相撲ともにほぼ横ばい。ただ全体では、前回の43.0%から39.9%に数値を落とした。視聴率の高いフィギュアスケート、駅伝・マラソンがオフシーズンとなった影響も少なくなかった。

 直接観戦した人には評価、観戦していない人には期待という形でスタジアム、競技場の感染予防対策を聞いた。両者とも「アルコール消毒設備の設置やスタッフのマスク着用、室内の換気」が最も高かった。2番目は観戦経験者が「来場者への注意喚起」で、未経験者の「入場者数の制限」とで分かれた。未経験者で「今後もしばらく直接観戦を控える」と答えた人が前回8.3%から10.6%に伸びた。慎重姿勢は何ら変わっていないことが読み取れる。

 五輪「楽しみ」は3割

 延期された東京五輪・パラリンピックについて「楽しみ」と答えた人は27.9%(とても、やや合計)で「楽しみではない」が38.1%(同)、「どちらともいえない」が34.1%となった。否定的な回答をした人は「コロナへの不安」「中止の可能性が高い」を理由に挙げた。

 SSFは来年2月、3度目の定点観測を行う予定。10月から1月が対象期間となり、この間、11月のバッハ・国際オリンピック委員会(IOC)会長来日を境に開催に向けた動きは目立っている。阿部、丸山両選手の闘いは見る者を引き付け、東京大会への期待を後押しする。一方、コロナ禍は拡大、Go To事業は一時停止が決まった。人の心はどう動くのか。スポーツの今後にも強く関わっている。

【プロフィル】佐野慎輔

 さの・しんすけ 1954年富山県高岡市生まれ。早大卒。サンケイスポーツ代表、産経新聞編集局次長兼運動部長などを経て産経新聞客員論説委員。笹川スポーツ財団理事・上席特別研究員、日本オリンピックアカデミー理事、早大および立教大兼任講師などを務める。専門はスポーツメディア論、スポーツ政策とスポーツ史。著書に『嘉納治五郎』『中村裕』『スポーツと地方創生』(共著)など多数。

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