2021 成長への展望

JFEスチール社長・北野嘉久さん 脱炭素化とデジタル化をチャンスに

 --昨年を振り返って

 「激動の1年だった。経済的打撃はリーマン・ショック時よりひどい。あの時はその後に経済がV字回復したが、今回はそうなっていない。昨年4~6月は国内の粗鋼生産量が前年同期比で3割も減った」

 --足元の鉄鋼需要は回復傾向にある

 「日本国内では自動車向けは戻っており、建設機械や産業機械向けも復調の兆しが見えてきた。だが建築や造船向けは回復に時間がかかる。予想できなかったのは原油価格の下落だ。これはわれわれのシームレス(継ぎ目なし)鋼管にとって打撃だ。人の移動が戻れば原油価格も戻るだろうが、先は見えていない」

 --中国経済がいち早く回復した

 「経済回復を背景にした中国勢の台頭は脅威だ。数年前に彼らの過剰生産能力が問題になったが、生産能力はさらに数億トン規模で増えている。彼らが鋼材の投げ売りを増やせば、以前にも増して脅威となる。顧客がすぐさま中国メーカー製に切り替えるとは思わないが、投げ売りで全体の市況が落ち込むことが問題だ」

 --昨年3月に東日本製鉄所京浜地区(川崎市)の高炉休止を含む構造改革を打ち出した

 「コロナ前に決めた計画だ。内需の減少や世界経済の失速、中国の台頭などを考えれば、今まで以上に高級品へシフトしていかないといけないと苦渋の決断を下した。新型コロナで環境はさらに悪化したが、追加策は考えていない。まずは発表した計画をしっかり実行する」

 --昨年9月にJFEグループの鉄鋼事業で、2030年度の二酸化炭素(CO2)排出量を13年度比で20%以上減らすと宣言した

 「JFEがCO2排出削減で中長期の数値目標を公表するのは初めてだ。今年に入ってから欧州の鉄鋼メーカーを中心に脱炭素化への対応が活発になってきているが、当社もしっかり対応していく。一方でデジタル化も急務だ。生産性に品質、省エネ、安全、環境と、全てデジタル化が鍵を握る。環境が厳しくなる中、デジタル化は命綱になるだろう。必達目標である21年度の黒字化以外では、脱炭素化とデジタル化をチャンスと捉え、成長していくことが今年の目標だ」

 --21年度から新中期経営計画が始動する

 「海外需要をどう捕捉するかが、脱炭素化やデジタル化とともに成長に向けた重要な施策となる。海外はインドとベトナムの攻略が特に欠かせない。インドは現地大手に15%を出資しているが、機会があればさらに踏み込む可能性もある」

【プロフィル】北野嘉久 きたの・よしひさ 東工大院修了。1982年川崎製鉄入社。JFEスチール常務執行役員、専務執行役員、副社長などを経て、2019年4月から現職。茨城県出身。

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