2021 成長への展望

住友化学社長・岩田圭一さん イノベーションで社会的課題を解決

 --2020年は厳しい年だった

 「新型コロナウイルスの感染拡大で、世界経済にとっては良いことのない1年だった。ただ、自社への影響という点では、リーマン・ショック時を上回る景気後退があると身構えていた割には大きな影響を受けていない。中国の景気が夏以降に回復したこともあり、当初覚悟したほど悪くならなかった印象だ。ただ悪いことには変わりないので注視していく必要がある」

 --新型コロナの石油化学事業への影響は

 「昨年は各社ともダメージを受けた。特に自動車向けの需要が前半にパタリと止まった。一方、同じ石化でも好調な製品とそうでない製品がはっきりした。自動車用の合成樹脂は駄目だが、食品包装フィルムは好調で、感染防止用の仕切りに使うアクリル樹脂も伸びている。ずっと悪いのは(衣料向けの)合成繊維だ」

 --コロナ以前への回復は

 「2021年中の回復は厳しいかもしれない。半導体関連は新型コロナの影響が少なく好調だが、それでも19年に落ちすぎたので戻りきっていない。経済全体が回復するのは22年ではないか」

 --日本政府が50年に温暖化ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げた

 「非常に野心的な目標だが、実現には多くのハードルがある。住友化学としては、自社と社会の両面で排出ゼロを目指す。二酸化炭素(CO2)排出削減は次期中期経営計画の大きなテーマの一つでもある」

 --昨年は、サウジアラビアで合弁で運営している石油化学コンビナート「ペトロ・ラービグ」が経営の重荷となった

 「5年に1度の定期修理で設備が約2カ月間止まった。さらにラービグは天然ガス由来のエタンから石化製品を作っているが、原油価格の下落で相対的に競争力が落ちた。他にもさまざまな特殊要因が重なった。ただ、第1期事業の借り入れは今年で完済する。第2期事業の安定稼働にもめどがついたので、これから本格的な収穫期に入る」

 --今年の抱負は

 「やはりイノベーション(革新)だと思う。現行中計でも次世代事業の創出加速を掲げ、ベンチャーや大学との連携を含むイノベーション・エコシステム(生態系)の構築に取り組んでいるが、社会的課題を解決するのはイノベーションしかないと思う。もう一つのキーワードはワクチンだ。これがどうなるかで世界経済の景色が変わる。ワクチンが十分に効かないとなると、経済回復にはもうしばらくかかる」

【プロフィル】岩田圭一 いわた・けいいち 東大法卒。1982年住友化学工業(現住友化学)入社。2010年執行役員、18年専務執行役員などを経て、19年4月から現職。大阪府出身。

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