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製造業「対コロナ」に活路 島津製作所は半年でPCR装置開発

 新型コロナウイルスの感染拡大が長期化する中、打撃を受ける関西の製造企業が独自の技術やノウハウを生かし、感染対策のための製品開発や新規事業に活路を求めている。島津製作所はPCR検査の拡充に貢献する全自動検査装置を約半年で開発。中小企業でも感染対策製品の開発挑戦が相次いでおり、自治体は補助金や販路拡大の支援を始めた。

 全自動で200万円台

 島津製作所は昨年5月、感染症対策の仕組みづくりを提案する「感染症対策プロジェクト」を発足。最優先目標として開発したのが全自動PCR検査装置だった。

 約20人の開発チームは同社の分析機器で実績のある部品や技術を活用し、価格の抑制や安全性の確保を目指した。生産を目前に控えた8月には、米国での感染拡大により検査数が激増し、現地メーカーから部品調達が難しくなる事態が発生。調達先を国内メーカーに替えるための設計変更を余儀なくされた。

 開発チームを主導したバイオ・臨床ビジネスユニットマネージャーの花房信博氏は「代替案をいくつも用意していたおかげでどうにか開発が進み、部門の前任者や間接部門からも多くのサポートが得られた。『国難の中で社会に貢献したい』という思いが連携につながった」と振り返る。

 11月には開発着手から約半年という異例の短期間で発売にこぎ着けた。装置は同時に4つまでの検体を最短90分で測定。前処理から測定までを自動化してミスを減らすことで安定した測定結果を得られる。価格は209万円で、同等の機能を持つ他社製品より200万円ほど安くした。

 販売目標は年間3000台としたが、感染が再拡大する中、計画以上のペースで受注。特に地方の医療機関では、新型コロナの感染疑いがある患者だけでなく別の入院患者や医療従事者らに対する検査ニーズも高く、納入したそばからフル活用される状況が続く。

 コロナ禍で分析機器全体の需要は落ち込み、同社は2021年3月期の業績予想で減収減益を見込むが、花房氏は「今回の経験を感染症対策の枠組みの中で新たな製品開発に生かしていきたい」と意気込む。

 看板加工技術生かす

 新型コロナを機に挑戦するのは大企業だけではない。看板製作業のジャックスクリーン(大阪府八尾市)は昨年4月、フェースシールドやパーテーションなどの感染対策製品の製作・販売を始めた。

 同社では、訪日外国人の急増で好調だった新規出店に伴う看板の受注が新型コロナで激減し、会社の売り上げも半減。閉店に伴う看板撤去の仕事の方が多くなる状況に陥った。

 業績悪化が深刻化した昨年4月、今岡和雄社長は「従業員の気持ちを冷やさないように」と、看板の加工技術と設備を生かしてフェースシールドの開発を発案。看板材料の調達業者からプラスチック製のシートなどを仕入れ従業員総出で製造し、1枚1000円前後で発売した。

 それまでは事業者間の取引が中心で販売のノウハウはなかったが、社内でデザインしたチラシの戸別配布やSNS(会員制交流サイト)でアピール。5月だけで約1000枚を販売し、その後発売したアクリル板のパーテーションは今でも注文が続いている。

 今岡社長は「感染対策製品の売り上げは減収分をカバーするほどではないが、想定以上の反響に手応えを感じている。従業員と危機感を共有して積極的にアイデアを出し合う空気も生まれた」と明かす。

 帝国データバンクによると、関西圏では新型コロナが影響した企業倒産が今年1月12日までに148件あり、業種別では小売業の47件、サービス業の33件に次いで製造業が29件となった。感染拡大が長引く中、企業にはコロナに対応した取り組みが求められる。

 こうした動きを自治体も支援する。ものづくり企業が集まる大阪府東大阪市は昨年、感染対策の商品開発や製作の費用を補助するため、16年度から実施する「医工連携プロジェクト創出事業」の補助率を拡充。応募した23社のうち11社へそれぞれ最大1000万円を補助した。

 既に製品化されたものもあり、プラスチック製品メーカーの甲子化学工業は、ドアノブに後付けすれば手で握らずに腕や肘でドアを開閉できる「アームハンドル」を開発した。

 市は開発済みの製品を医療機関や商店街などに紹介しており、担当者は「企業には感染対策としての社会貢献だけでなく、新規事業の開拓や販路拡大につなげてほしい」としている。(山本考志)

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