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大手商社、石炭権益撤退を加速 新事業収益化急ぐ

 総合商社各社が、保有する石炭権益を売却するなど脱炭素に向けた動きを加速している。伊藤忠商事が発電用の石炭権益の大半の売却を決めるなど、各社とも二酸化炭素(CO2)排出が多い事業の大幅縮小を進めている。これまで各商社の事業の柱となってきた石炭火力発電事業も削減していく。ESG(環境・社会・企業統治)経営の強化を進め、菅義偉首相が2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を打ち出したことに対応する。

 発電用石炭(一般炭)については、三菱商事が資源事業の見直しの一環で、すでに19年までに保有していたすべての権益を売却している。

 これに続き、伊藤忠も一般炭権益すべてを売却する。主力の南米コロンビアで保有する鉱山権益を来年度中に売却する方針を打ち出した。年間生産量は620万トンで、同社が保有する一般炭権益の8割に相当する。残り2割をまかなうオーストラリアの2鉱山も、23年度までには売却し、一般炭の権益事業からは完全撤退する方針だ。

 火力発電も縮小

 三井物産は、モザンビークのモアティーズでの炭鉱事業と、関連する鉄道・湾港の権益を共同経営するブラジル資源大手ヴァーレにそれぞれ1ドルで譲渡する。すでに業績予想には織り込み済みという。

 住友商事は、米シェールオイル開発事業から撤退した。昨年度までにペンシルベニア州で保有していた権益を売却したのに続き、残っていたテキサス州の鉱区の権益をこのほど売却し、シェールオイル開発から完全に撤退した。米バイデン政権が脱炭素政策を強め、事業の採算性が懸念されたことも撤退の背景にある。

 発電事業でも脱石炭火力が進む。丸紅は権益を保有する石炭火力の総発電容量が18年度時点で300万キロワットあったが、30年をめどに半減する方針を打ち出した。三菱商事も新規の石炭火力発電は手掛けない方針だ。

 石油や天然ガスなどに比べて価格が安い石炭は、発展途上国などからもニーズが高く、総合商社にとって石炭関連事業は資源事業の主力となっていた。ただ、燃焼時のCO2排出量が他の化石燃料に比べて多く、事業の縮小を余儀なくされている。

 新事業収益化急ぐ

 15年の資源市況急落以降、総合商社各社は、資源事業比率を戦略的に引き下げてきているが、現在でも石炭を含めた金属資源事業は収益の大きな柱となっている。非資源比率が高いとされる伊藤忠商事でも、石炭権益事業を含む金属カンパニーの最終利益は12年3月期に1421億円と全体の5割弱を占めていた。20年3月期では全体の2割強にとどまるが、同カンパニーの最終利益は1114億円と部門別ではトップだった。

 他の総合商社も金属・資源事業が稼ぎ頭であることは変わらない。各社ともCO2の回収や有効活用など新技術の開発なども進めており、こうした事業の収益化を急ぐ。(平尾孝)

 主な総合商社の石炭関連事業縮小や脱炭素の動き

 伊藤忠商事 コロンビアの一般炭権益売却決定。2023年度に同事業から撤退 三菱商事 一般炭事業から撤退済み。新規の石炭火力発電事業は手掛けず 三井物産 モザンビークの炭鉱事業と鉄道・港湾事業からの撤退を決定 住友商事 米テキサス州のシェールオイル鉱区権益を売却し、同事業から撤退 丸紅 石炭火力発電の容量を30年をめどに18年度比半減へ 

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