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接待繰り返した東北新社 全容解明へ追加調査求める声も

 総務省の幹部が放送関連会社「東北新社」から接待を受けていた問題で、同省が22日に公表した調査結果からは、東北新社による接待が一部の幹部だけでなく現場職員まで幅広く行われていた実態が浮かび上がった。一方で、なぜ東北新社が接待を繰り返したのか、接待の結果、放送行政がゆがめられるようなことがなかったかなど、肝心の点は曖昧なまま。全容解明にはほど遠く、再調査を求める声も上がっている。

 「国民に疑念を抱かせる事態になったことを深くおわび申し上げます」。調査を主導した同省秘書課の担当者は、説明の冒頭でそう述べたが調査結果はさらなる疑念を生む内容だった。

 総務省によると、調査はまず接待の事実が判明していた幹部4人と東北新社側に実施。調査の過程で出てきた領収証などから新たな案件についても調査対象を広げ、新たに9人が東北新社から接待を受けていたことが明らかになった。

 接待を受けた職員はいずれも東北新社について「利害関係者との認識がなかった」との説明をしたという。東北新社は番組制作や買い付けなどを行っている会社で、総務省の許認可対象ではないからだ。

 ただ、接待をした東北新社の社員は総務省から許認可を受ける衛星放送子会社の社長や役員を兼務。その中には菅義偉首相の長男もいた。総務省の担当者が、許認可を与える会社の社長や長男のことを知らないとは考えにくいが、調査結果を発表した担当者は「東北新社の名刺で仕事をしていたので分からなかったようだ」と苦しい説明を繰り返した。

 東北新社が総務省職員を接待していた背景については「情報交換」や「忘年会」などと認定。接待の結果、放送行政がゆがめられた可能性についても「なかった」と結論付けた。

 しかし文春オンラインが公表した音声データでは、接待の中で衛星放送の許認可に関する会話が行われていた。この会食に出席し、当初は利害関係者との認識がなかったと説明していた秋本芳徳・前情報流通行政局長も、音声データ公表後は利害関係者との認識があったことを認めている。

 証拠がない限り「知らなかった」とする関係者の証言をそのまま認定した同省の調査の踏み込み不足は明らかで、同日の衆院予算委員会でも、野党議員からは再調査や第三者による調査を求める声などが相次いだ。

(蕎麦谷里志)

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