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名車「クラウン」があっという間に売れなくなった本当の理由 (1/3ページ)

 2020年11月、かつては日本の庶民の憧れだったトヨタ高級車のメジャーブランド「クラウン」の生産終了が報じられた。いったい何がそうさせたのか? 車の製造・販売の現場を知り尽くした専門家、平塚俊樹氏がその意外な理由を語る--。

 新車が年24万台も売れていた一大ブランド

 トヨタの高級車ブランド“クラウン(王冠)”が、ついに消滅するという(東京中日新聞2020年11月11日付)。1955(昭和30)年の販売開始以来65年、15代にわたってトヨタおよび日本の代表的なセダンとして親しまれてきた。CMのコピー「いつかはクラウン」に象徴されるように、庶民が所得増とともに買い替え・グレードアップしてゆく車の“頂点”であり、バブル期の1990年度には新車23万9858台を売り上げた一大ブランドである。

 しかし、その後は徐々に販売台数を減らし、2001年度には7万8656台に。現行のクラウンが発売された2018年度に5万8548台を数えたのが近年のピークだった。コロナ禍に見舞われた20年は、一時激減したトヨタ車全体の新車販売台数が4~10月に前年同期比16%増の急回復を見せる中、同1万7988台から1万821台と前年から約4割も減らしていた。

 トヨタは公には認めていないものの、クラウンの名の神通力がここまで衰えてきたのをみれば、ほぼ既定路線のようだ。何がこうした結末を招いたのだろうか。

 ライバル車はあらゆる最新技術を、惜しげもなく搭載

 「直接的な理由は、『100万円、150万円は当たり前』という直近のドイツ車の値引き攻勢でした」--大手車用品メーカーでクレーム対応を務め、大手自動車メーカーの開発アドバイザーを務める平塚俊樹氏は、自身でも身銭を切った車の買い替えで試行錯誤を繰り返してきただけに、その指摘はリアリティ十分だ。

 「ベンツ、アウディ、BMWなど世界中で売れているドイツ勢。その日本国内での値引き攻勢の尖兵となったのは、クラウンにはないクリーンディーゼル車でした。高速道路での走行のフィーリングが素晴らしく、セダンで長距離移動する個人の客層をとりこに。しかも、バックする車の後ろを監視するRCTAや、ハンドル操作を支援して車線から外れるのを防ぐLTA等々、あらゆる最新技術を惜しげもなく搭載してきたんですね」

 アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC、前の車との車間距離を保ち、停止・再発進も行える機能)や自動ブレーキも、常に最新のもの。じゃあ、クラウンだって日本が誇る最新設備を積めばいいじゃないか、と誰でも思いつきそうなものだが、後述するようにそれがうまくいかなかった理由がある。

 「クラウンに限らず、日本のセダンじゃとても勝負になりません。レクサスも負けている。今、唯一張り合えるのは、トヨタの世界戦略車であるカムリくらい」と平塚氏は言う。ドイツ車と張り合える車と、そうでない車との違いを理解するにはまず、このクラウンとカムリの車本体の仕組みやボディの構造についての簡単な説明が必要だ。

 質実剛健、“壊れません”というコンセプト

 同じ高級セダンでも、クラウンとカムリには大きな違いがある。クラウンはFR(=フロントエンジン・リアドライブ)、カムリはFF(=フロントエンジン・フロントドライブ)。FRとは、後輪駆動。最もポピュラーな前輪駆動=FFと同様にエンジンは前方についているが、シャフトで後輪に動力を伝達して駆動する。乗用車のつくりの根幹に関わる違いだ。

 ここに、ボディの構造の違いが重なる。

 「堅固なフレームにボディを載せた昔ながらの『フレーム構造』と、基本的に外殻のみでフレームがない『モノコック構造』の2つがあります。頑丈なフレーム構造に対し、スペースを確保しやすいのがモノコック構造。カムリはこれです。対するクラウンは、長年フレーム構造のFRを通してきました」

 フレーム構造のFRを一言で言うと質実剛健、“壊れません”だ。クラウンのパトカーやタクシーが数多く見かけられた理由はそこにあった。

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