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日鉄・呉高炉休止まで半年 「製鉄一筋」転業は困難

 高炉休止まで半年。製鉄所とともに歩んできた広島・呉の街が危機に陥っている。「社員を切るわけにはいかない」と新規事業にかじを切る協力会社がある一方、「製鉄一筋」で転業が難しく、廃業を選んだ会社もある。

 社員約60人の山陽興産は、事業所の一つを製鉄所内に置く。機械やレールの整備などを請け負ってきた。製鉄所がなくなれば、社員の8割が仕事を失うことになる。

 「準備期間が短い」。河合修孝社長(40)は頭を抱える。新たな事業を探すにも、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、県外での営業は難しい。呉市内に作業場を新設し、溶接などの受注増を狙うほか、近場で工事を受注し実績を積み、継続的な仕事を確保したい考えだ。

 社長就任後まもなく製鉄所閉鎖の発表を聞いた。「激動の日々だった」と振り返る。従業員を守るにはどうすればいいか。「一発逆転はない。長い目でやっていく」

 製鉄所と共生してきた企業は、売り上げのほとんどがなくなる。高炉の部品を納入するミヤハタ機工の宮畑和則社長(70)は「うちでしか扱えない特注品だった。逆に言えば、他の場所では使えない」と話し、廃業の準備をしている。

 製鉄一筋の人生だった。呉市で製鉄所の協力会社に長年勤務し、2004年に独立。製鉄所から図面を提示され、下請け会社に部品を発注。それを製鉄所に納入する仕事だ。今は妻と2人で会社を切り盛りする。

 高炉休止と製鉄所撤退は「さみしいが、鉄が売れない時代だから仕方ない」と受け止める。一方で「現場で顔を真っ黒にして働く若い人たちが心配だ」と声を落とした。日鉄関連会社で働く30代男性はこう漏らす。「地元に残れたらいいが、給料が下がるかもしれない。不可能とは分かっているが、製鉄所を残してもらうのが一番だ」

 飲食店も打撃を受ける。呉市中心部で居酒屋を営む中西孝一さん(42)は「日鉄の発表以降、夜の街から笑い声が聞こえなくなった」と肩を落とす。製鉄所関連の客も減った。中西さんは「製鉄所が完全閉鎖した後の影響がどうなるか、見えない。不安だが踏ん張るしかない」と語った。

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