主張

みずほATM障害 社会基盤担う覚悟見えぬ

 またもや、みずほ銀行のシステム障害かと誰もが思ったことだろう。

 みずほ銀のATM(現金自動預払機)で2月28日、出金などができなくなった。全国にあるATMの過半数が停止し、利用者に不便と不安を強いる混乱をもたらした。

 ATMは経済や社会を支える基盤インフラである。その機能が止まれば、暮らしに多大な影響を及ぼす。預金者の信頼を損ねる重大な障害だと厳しく認識しなくてはならない。

 藤原弘治頭取は記者会見で「二度と起こさない強い決意の下、再発防止の徹底に全力を尽くす。深くおわびする」と陳謝した。

 だが、公共インフラを担う金融機関の役割にどこまで覚悟を持って取り組んできたのか。ただでさえ、同行は過去2度の大規模システム障害で失った信頼の回復途上にある。令和元年夏にはシステムも刷新した。にもかかわらず、2年足らずで障害が再発した。顧客の不信感は容易には拭えまい。

 原因究明はもちろんだが、その際には、システム運用の在り方やみずほ固有の組織的な問題点なども徹底的に点検しなくてはならない。そうでなければ再発防止策も実効性を得られないだろう。

 金融庁は銀行法に基づく報告徴求命令を出す方向である。厳正に対処してもらいたい。

 定期預金データの移行作業時に障害が生じた。ATMに入れたキャッシュカードや通帳が手元に戻らず、足止めされる事例が多発した。虎の子の預金が人質にとられたような異常事態である。

 特に問題だったのは、多くの顧客を長時間待たせた対応の不備である。複雑化するシステムの障害をゼロにするのは難しくても、不具合が生じたときの対応には万全を期さなければならない。この点も厳しく検証すべきである。

 もちろん、コンビニなどの提携先ATMを使った顧客に対する手数料負担など今後の作業を丁寧かつ円滑に進めるべきは当然だ。

 キャッシュレス決済が増える中でも、日本社会はいまも現金決済の比重が大きく、ATMが暮らしと密接につながっている。同行は1月半ばから、70歳未満の新規口座開設者に紙の通帳を発行する場合は手数料を徴収している。それなのに肝心の預金が適切に引き出せないようでは顧客の理解を得られまい。経営陣は顧客第一の視点を今一度、銘記すべきである。

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