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初対面で選ばれる営業は「準備8割」

 江戸時代の剣術書から引用された有名な言葉に「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉がある。プロ野球界で名将とうたわれた故・野村克也氏の座右の銘として知られるようになった。「負けにつながった理由は必ず存在する。それが何だったのか、どうすればその理由を排除できるかを言語化し、自覚することが重要。一方、説明できないような勝ちもあるが、その過程で負けにつながるようなミスを看過していては、継続的に勝つことは難しい」という意味だ。(プレゼンス社長・田路和也)

 営業の世界における「原理原則」も同じことが言える。「これをやれば絶対に売れる」はないが、「これをやると絶対に売れない」は存在する。その原理原則の一つが「商談前の準備を怠ること」だ。

 商談前の最も重要な「準備」は「ウィン-ウィンシナリオ」を描くことだ。営業という仕事は、「顧客を幸せにする」ことで、それに見合った対価をいただき、「自分自身が幸せになる」というウィン-ウィンの関係を多くの顧客と構築していく仕事だ。にもかかわらず、「顧客に買ってもらいたい」という自分自身のウィンだけを考えて、商談に臨んでいる営業職は多い。商談開始早々に、自社や商品・サービスを一方的に紹介する営業職が後を絶たないのは、そのせいだ。

 顧客心理を考えれば、それがうまくいかないのは明白だ。そもそも人は、初対面の人に対して「減点評価」しかしないものだ。それが営業と顧客という立場であればなおさらだ。初対面の営業担当が、「いかにウチの商品が素晴らしいか」を言葉巧みに説明したところで、より警戒心が増してしまう。だからこそ営業職は、いきなり「加点評価」を狙うシナリオではなく、「減点評価」されない商談の進め方を描いておくほうが賢明だ。それが「ウィン-ウィンシナリオ」の第一歩となる。

 初対面で「減点評価」されないためには、心理学上、4つの要素を示すことが重要だといわれている。1つ目は清潔感や行動力といった「営業らしい第一印象」。2つ目は顧客との間に共通の知人や共通の価値観を見いだしてもらう「共通性」。3つ目は知識、スキル、資格といった「能力」。4つ目は商談の最初に「決して売り込むことはしない」ことと「商談の結果にかかわらず、お互いにとって有意義な時間にすること」を約束する「ウィン-ウィンの意図」。これらを言葉と行動で示すシナリオを準備しておくことが、営業成功の第一歩となる。「営業は準備が8割」なのだ。

【プロフィル】田路和也 とうじ・かずや 早大商卒。1998年パソナ入社、2000年人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)入社、07年プレゼンスを設立し現職。14年アポロ広告社と合併。営業部門の時間生産性向上に特化した研修・コンサルティングを提供。著書に『仕事ができる人の最高の時間術』(明日香出版社)、『HRプロファイリング』(日本経済新聞出版)がある。46歳。兵庫県出身。

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