流通ビジネス新時代

マッチングワールド(2)副業・兼業の個人事業主に照準

 オリコと提携し与信枠

 「ウチが今、最も力を入れている事業です」。マッチングワールドの町田博代表取締役がこう語るのは、「副業」や「兼業」として、ネットで商品を販売している個人事業主や小規模小売店をターゲットとする事業だ。もともとの顧客であるテレビゲームのメーカーや卸問屋、量販店、専門店といった大手企業に代わり、4年ほど前から積極的に開拓してきた顧客層だ。

 家庭用ゲームが世に登場してからすでに40年以上が経過。当時、30代でゲームショップを始めた経営者はすでに70代になっており、インターネット販売に押されて淘汰されていく一方だ。片や、「副業・兼業」が国を挙げて推奨される時代、ネットで仕入れた商品をネットで販売する個人事業主が増えているという背景がある。

 「個人がネットショップを営む際の課題は仕入れができないことです。通常、卸売り業者は法人を相手に商売しており、個人には商品を卸さない。そこをわれわれが解決しております」とマッチングワールド事業戦略部の神永将行部長はこう強調する。また、オリエントコーポレーションと提携して、個人事業主に対し、同社だけで使えるオリコカード「マッチングペイ」を発行することで与信枠を提供しているのだ。

 個人事業主向けの与信枠は100万円から最大500万円まで、取引を重ねることで次第に増やすことができる。同社の決済期日は月末締めの翌月27日払いと最長57日の猶予があるので、手元資金がなくても、商品をM-マッチングサイトで仕入れ、国内外のネットショップで販売するなどのせどりが可能になる。

 卸情報サイト立ち上げ集客

 これら副業・兼業事業者やフリーランスの個人を同社の顧客として育成するため、2018年5月には卸情報サイト「商品の番人」を立ち上げ、個人が安心、安全に商品を仕入れるための知識やノウハウを提供している。とりわけ、個人事業主の参考になるのが、「売れ筋商品ランキング」だ。M-マッチングシステムの取引データを元に、ゲームソフト、トレーディングカードなどジャンルごとの1週間の販売数量上位50位までの商品を発表している。このランキングは電子メールでも解説付きで随時送信している。

 こうしたデータを即時集計できるのも、M-マッチングシステムを持つ強みだ。ただし、「メーカーや商品によっては業者に限定して売ってほしいという要望もあるので、そこは注意しながら取り扱っている」(町田氏)。

 こうした施策が奏功。個人事業主による会員登録は現在700人を超え、このうちM-マッチングシステムを使って常時稼働している会員は約80人に上る。会員数の増加に伴い、売上高も右肩上がりを続けており、直近の数字である21年2月のマッチングペイを利用した個人事業主向けの月商は約8000万円に達する見込みで、国内事業の売り上げの相当割合を担うようになってきた。とくに、ゲームとカードの取引が多く、両ジャンルの国内売り上げを底上げしている。

 当面、会員数2000人を目指す

 国内のインターネット人口が8割を超えた今、同社では「個人の会員登録数を10倍の7000人、100倍の7万人へと増やせる可能性は十分ある」(町田氏)と試算。当面、2000人の会員を確保し、稼働会員数を200人以上に引き上げて、現状の3倍の売り上げを目指す方針だ。

 アジア・北米など海外顧客も開拓

 海外市場はロングテール

 「海外市場はロングテール。古い商材もOKで、予期しない商品が売れます」。マッチングワールドの町田博代表取締役は国内市場とは異なる海外市場の特性をこう表現する。「ロングテール」というのはネットショップ関連のマーケティング用語で、売れ筋商品ではないニッチな商品が細々と売れ続け、累計すると時には売れ筋商品の売り上げを上回るような現象を言う。

 「国内市場が相手なら10年前、20年前の商材などを案内しません。ところがM-マッチングシステムで案内すると海外から注文が来ます。日本では不要とされる商材でも海外の顧客とならマッチングできるのです」

 日本の在庫を流動化させるため、古い商材でも売れる顧客を増やしていこうと、町田氏自ら率先し、早くから海外顧客を開拓してきた。「最初は香港の貿易発展局に行き、香港版イエローページをもらって、一軒一軒電話するところから始めました」。海外企業の信用調査をする手段を持たないので、アポイントが取れた企業を訪れ、まず社屋を確認。それから名刺交換して、信頼できそうな相手かどうかを見極めた。

 4カ国語でサポート

 香港に続いて、韓国、中国、台湾、シンガポール、北米、東南アジアと順次顧客を開拓。今では海外企業の登録数が800社を超えた。これらの顧客をサポートするため、それぞれの国の出身者を営業担当として採用。本社で4カ国語に対応できる態勢を敷き、国内営業と同様にM-マッチングシステムだけではなく、電話やファクス、チャットなどを駆使して、顧客対応に取り組んでいる。

 驚くのは、M-マッチングシステムの英語版を提供していないことだ。海外顧客も国内顧客と同じ画面を見て売買する。「彼らは専門のバイヤーなので、JANコード一つで商品の内容がわかります」(町田氏)。日本国内の在庫商品を海外に売るのであり、海外の在庫商品を国内に持ち込むわけではないので、それで十分なのだという。

 危機を乗り越える原動力に

 古い商材でも売れる海外顧客を開拓したことで、かつては海外向けの売り上げが先行。売上高比率が国内30対海外70という状況が続いた。近年は個人事業主の増大などにより、国内の売り上げ増加ペースが海外のそれを上回っており、直近期で国内46対海外54まで縮まってきた。

 海外顧客と国内顧客では与信の方法も異なる。海外顧客からは最初に保証金を預かる。支払い方法も入金後に商品を発送する仕組みだ。すべて円建て取引なので為替リスクもない。

 2008年のリーマン・ショックの際、売り上げが半減以下に落ち込んだうえに、貸し剥がしにも遭いながら生き延びられたのは、海外顧客が多かったためだという。「海外は入金が先なので、入金状況を確認しながら、なんとか資金を回すことができました」(町田氏)

 海外事業の当面の目標は登録企業数を1600社と倍増し、月商5億円(現在平均2億~3億円)規模に拡大することだ。このため、欧州での顧客開拓も視野に入れている。そして、将来的には海外・国内のそれぞれで年商100億円ずつになるのを理想としている。

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