21世紀を拓く 知の創造者たち

Jパワー 持続可能な社会へ脱炭素推進 (1/2ページ)

 電源開発(Jパワー)は、各地の電力会社に電力を供給する一方、持続可能な社会の実現へ向けた環境技術の開発にも力を入れている。二酸化炭素(CO2)の排出と吸収がプラスマイナスゼロになるカーボンニュートラルの社会実装が世界的な課題となる中で、第一線で研究業務にあたる3人の技術者に、克服しようとしている技術課題や将来の目標などを聞いた。

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 ■鈴木慎一郎さん IGFC実証に向けて

 ▽すずき・しんいちろう 若松研究所エネルギー利用システム研究グループ課長代理

 ■野崎渉太さん セメント代替探る

 ▽のさき・しょうた 茅ヶ崎研究所土木技術研究室主任

 ■長瀬弘樹さん 水素需要など調査

 ▽ながせ・ひろき 技術開発部研究推進室(水素タスク)主任

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 --皆さんは今、どういう研究をしているのですか

 鈴木 若松研究所(福岡県北九州市)に所属し、エネルギー利用システム研究グループで、燃料電池に関する業務に取り組んでいます。次世代石炭火力発電技術の開発を進めるために、Jパワーと中国電力が共同で推進する大崎クールジェンプロジェクトでは、発電効率を飛躍的に向上させるCO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)に向けた実証試験を進めています。私自身は、CO2のゼロエミッションを目指すこのプロジェクトの最終段階で使用する燃料電池の要素研究を担当しています。現在は、若松研究所に燃料電池を設置し、さまざまなガスの組成や運転条件を検討しながら、技術的な課題やノウハウの抽出を行っています。

 野崎 茅ヶ崎研究所(神奈川県茅ケ崎市)の土木技術研究室で、CO2排出量の低減に向けて、セメントの代替材料として産業廃棄物を有効利用したモルタルがコンクリートの代替品となるかの研究や、火力発電所から出るフライアッシュ(石炭灰)の有効利用に関する研究に取り組んでいます。例えば、銅スラグやフライアッシュ、水、セメントを練り混ぜて製作したモルタル製の消波ブロックを海岸に設置し、コンクリート製やその他材料製の消波ブロックと比較検討しています。一般的なコンクリート構造物はセメントを使用しますが、セメントを製造する際にCO2を排出することは避けられません。フライアッシュや銅スラグがセメントの代替材料として有効であれば、セメント量の低減が可能となり、材料に起因するCO2排出量の削減効果が期待できます。

 長瀬 技術開発部研究推進室に所属し、日豪水素サプライチェーンプロジェクトを担当しています。このプロジェクトは、水素サプライチェーンの構築・商用化に向けて、褐炭ガス化・水素ガス精製・液化水素製造・液体水素運搬船・液体水素荷揚基地の実証試験を行っており、Jパワーは現地で褐炭をガス化し、水素をつくる部門を担当しています。私の業務は、設備プラントの建設・運転に関わる諸契約や豪州国内の水素需要やプラントの稼働に伴い発生するスラグ、CO2の有効活用の需要調査を担当しています。CO2排出量削減のためにバイオマス利用の検討、調査も担当しています。

 --それぞれが取り組むテーマの重点課題と、それを解決するカギは何だと考えますか

 鈴木 大崎クールジェンプロジェクトは3段階で構成され、第1段階では、「酸素吹石炭ガス化複合発電(酸素吹IGCC)」の実証試験を行い、第2段階では、酸素吹IGCCにCO2分離回収設備を付設した「CO2分離・回収型酸素吹IGCC」を実施しています。そして、最終の第3段階では、燃料電池を付設したIGFCの実証を行います。石炭から生成したガスはCO2分離・回収後、主成分が水素となります。一方、使用するSOFC(固体酸化物形燃料電池)は、発電燃料としてLNG(液化天然ガス)を使用するものが実用化されています。そのため、石炭から作られた水素への燃料電池適用が課題となります。若松研究所では、石炭ガスを模擬する供給設備を設け、さまざまな組成の燃料を調整し、SOFCへの適用性を試験しています。また、小型の石炭ガス化炉も設置しており、実際の石炭ガスを混ぜながら、どのような状態になるのかを確認し、運用上の課題抽出に取り組んでいます。研究の基本である予測と検証において、想定とは異なる結果や状況になることがありますが、一歩ずつ確認しながら進めております。

 野崎 銅スラグを有効利用したモルタル製の消波ブロックは、海藻が付着しやすい特徴を有している可能性があります。海藻類がブロックに付着することでCO2を吸収する「ブルーカーボン」の効果を期待できます。加えて、産業廃棄物の有効利用に伴うコスト効果や、重量の増加による安定性が期待できます。一方で、海藻類の付着メカニズムを解明することが課題です。メカニズムは複雑であり専門外のため、多角的な視点で考える必要があることから、各関係者にも協力していただきながらメカニズム解明を進めています。また、銅スラグに含まれる化学成分が影響している可能性があるため、異なる材料を用いて検討を行っています。もう一つの課題は、用途を拡大させることです。着床式洋上風力の基礎への適用可能性を探っています。そのためには、各材料の特徴、品質への影響やメリットを説明できる知識や発想力を磨いていく必要があります。

 長瀬 日豪水素サプライチェーンプロジェクト後の商用化を見据えるとJパワーが担当している石炭をガス化するプラントは、水分を多く含む褐炭を乾燥させるための前処理をする設備、ガス化設備、ガス化した後の合成ガスをクリーンアップするための設備、発生したCO2を回収する設備、これらを動かす発電設備を合わせた5つの設備で構成される予定です。各工程で水や蒸気の利用・排出を伴うため、それらを効率よく組み合わせることが重要な課題です。若松研究所で研究しているシミュレーションシステムも活用し、将来のプラント設備の検討を行います。豪州の実証プラントでは現在試運転が始まっており、当社初の褐炭ガス化プラントなので、新たな知見が得られています。また石炭をガス化設備に送る「搬送ガス」にCO2を活用するシステムも当社初の取り組みなので、実際に動かしながらデータを収集し、シミュレーションに活かしていかなければなりません。粘り強く着実に計画を前進させていきたいです。

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