テクノロジー

自社技術で下請け一辺倒からの脱却へ コロナ禍を「強み見直し」の時に

 新型コロナウイルスの影響で、日本の経済を支えてきたものづくりの現場にも大きな影響が出た。ものづくりの中小企業や町工場を多く抱える大阪でも、業績悪化の苦境を訴える声は大きい。その中で、コロナ禍で停滞した時間を、自社の強みを見つめなおす時間ととらえる企業もあり、活路を模索している。(大島直之)

 「今回ばかりはダメだった…」

 大阪府東大阪市にある、創業60年、業務用照明を手掛ける「盛光(せいこう)SCM」の工場の一角。職人が丸いアルミ板を回転させながら、ヘラを押しあてると、板はきれいに円錐(えんすい)状に形を変えていった。微妙な力加減で狙い通りの形を作り出す職人技だ。

 円錐形アルミは照明の反射板や傘部分として使われる。大型複合商業施設や高級飲食店、ホテル、ブランド店などに納入してきた。

 ところが1年前のちょうど今頃から夏にかけて、コロナ流行拡大と合わせて受注は激減、前年比で約6割減となった。社長の草場寛子さんは平成21年の社長就任以来、初めて金融機関から融資を受けた。

 「社長就任から11年、どんなに売り上げが下がってもやりくりしてきたが今回ばかりはどんなに踏ん張ってもさすがに無理だった」と吐露する。コロナ前には山積だった部品ケースは減って、工場内は広々とした印象になった。

 ただ、「こんなピンチだからこそ大胆な攻めの経営を打ち出す」と話す。

 新しい生活様式にあった製品を

 10年前に経験した経営不振が糧となっている。ちょうど白熱電球からLED照明への転換期で受注が激減し、下請け事業依存からの脱却を模索した。工業デザイナーと連携し、平成26年に自社ブランド「NEEL」を設立。デザイン性の高いスタンドで海外の展示会にも出展して世界販売を狙ってきた。

 今回、コロナ禍で取り組むのが新しい生活様式にあった家具の開発だ。米国在住の世界的インテリアデザイナーとタッグを組み、今春の製品化を目指し、いかに生活空間にとけ込みながらデザイン性を高められるかを追求している。

 「まだ詳細は企業秘密」というが、草場さんは「熟練の技術やアイデアはまだまだある。コロナを機に新しい製品を東大阪の町工場から発信していきたい」と意気込む。

 試作技術を生かして

 コロナ対策商品に社運を託す企業もある。

 大阪府豊中市の名神高速豊中インターチェンジ近くの中小工場集積地にある渡辺製作所。大手企業の試作品用部品、例えば、自動車の内装やコピー機の部品などさまざまな大きさや形状のパーツを受注してきた。

 大手企業の技術革新、成長に欠かせない試作品に関係するため、昭和50年の創業以来、不景気にも大きく影響されずに来たが、大手企業がテレワークにシフトした今回は勝手が違った。

 専務の渡辺安雄さんは「技術者も自宅勤務になったことで、開発が止まってしまった。こんな形で受注が減ったのは経験したことがない」と明かす。コロナ前は金属を削る音が鳴り続けていた作業場も、コロナ前に比べると機械が稼働しない時間帯が増えた。

 こうした中、同製作所に朗報をもたらしたのが箱の上に手をかざすと除菌液が霧になって噴き上げる自社開発製品の「リキッドジェット」だ。2年前に初の消費者向け製品として発売した商品で、試作部品で磨いてきた技術が凝縮されている。「普段から数千、数百種類の一品ものの部品を手掛けてきた。小さな箱の中に、直径数ミリの歯車など小さな部品を作って入れるのは得意」と胸を張る。

 ただ、実は、コロナ前までは売れずに在庫が積みあがっていた。しかし、今では累計4500台を販売。下請け一辺倒のビジネススタイルからの脱却に手応えを与えている。

 感染拡大が落ち着けば、受注の回復も見込まれる。しかし、コロナ前から大手企業は試作品製造の海外移転を進めてきた事情がある。渡辺製作所はコロナ禍を、事業転換のタイミングとしてとらえている。

 渡辺さんは「今後も消費者向け製品に挑戦し、ビジネスチャンスを探っていきたい」と次へのアイデアを巡らせている。

 大阪府の調査によると、平成28年時点の産業別事業所数の割合で、製造業は10・9%に上り、全国平均の8・5%、東京都の7・0%を上回った。ものづくりの盛んな大阪で、奮起する中小企業をたずねた。

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