スポーツi.

選手の肖像権で裁判、「出費ゼロ」の全米大学体育協会に試練

 NCAA(全米大学体育協会)は、収入の大半である10億ドル(現在のレートで約1090億円)を学生バスケットから得ている。カレッジスポーツ全体でいえばアメリカンフットボールが断トツの収入を稼いでおり、「パワー・ファイブ」だけで40億ドルの収入を上げている。(GBL研究所理事・宮田正樹)

 アメフトはビジネス権益が少ないため、収入源としてはバスケットボールの後塵(こうじん)を拝している。NCAAを筆頭にカレッジスポーツ・ビジネスの収益の源泉は、選手である学生に対する出費(報酬)がほぼゼロで済んでいるところにある。

 選手の肖像権で裁判

 そのビジネスモデルを大きく揺るがす裁判と立法が進行している。3月31日から、米連邦最高裁において「NCAA対アルストン」という訴訟が始まることになっている。訴訟の内容は、NCAAの規則(学生選手にはその肖像権の使用に対する対価の受け取りを認めないとする規則)に対する現役・OB選手らのクラスアクション(集団訴訟)である。

 最高裁においてカレッジスポーツに関する審議が行われるのは、実に35年ぶりのことだ。しかも、前回争われたのもNCAAに対する訴訟で、1984年に判決が下され、NCAAが傘下の大学のアメフトの試合のテレビ放映数に制限を設けていたことが反トラスト法(独占禁止法)違反であると裁定された。

 NCAAは、設立の当初より、学生選手に試合をすることやその肖像権の使用に対する報酬の受け取りを禁止している。だが、テレビの普及によりカレッジスポーツ・ビジネスが大きな収入をもたらすようになって以来、現役・OB選手から「対価を支払え」「報酬の受け取りを認めろ」という訴訟が頻繁に起こされるようになり、その多くがNCAAの規則は反トラスト法違反であるとするクラスアクションに発展している。

 最高裁で争われるNCAA対アルストン訴訟は、元アメフト選手だったアルストン氏が「肖像権の使用の対価の金額制限枠を取り払え」としたもので、2019年3月に地裁で、20年5月には第9巡回裁判所で、「反トラスト法違反」「現金以外(パソコン、科学用具、楽器、留学費用、有給インターンシップなど)で提供されれば、受け取りを禁止してはならない」と判決が下された。

 これを不服としてNCAAが上訴し、最高裁が審議することを認めたのだ。

 いびつな収入配分

 一方、カリフォルニア州は19年に「Student Athlete Bill of Rights」として知られた従来の法律SB206号を改正した。大学スポーツ選手にその肖像権の使用の対価を受け取ることを禁止するとしていた従来の規定を否定。選手の権利を大幅に認める「Fair Pay to Play Act」と通称される新SB206号を制定した。この法律は23年1月1日から施行されることになっている。また、昨年12月には、連邦議会において「College Athletes Bill of Rights」と通称する法律案が上程された。この法律は、学生選手が「公平かつ公正な補償」を受け取れるようにすることを目的としている。

 なお、司法ではバスケットボールとアメフト選手の救済だが、立法は全学生スポーツ選手を対象としたものだ。

 あまりにも多くの収入を得ているNCAAや大学と比べ選手にはせいぜい「奨学金」程度という配分のいびつさを解消すべきだという世論がピークに向かいつつあるのが、米国のカレッジスポーツ・ビジネスを取り巻く状況である。

【プロフィル】宮田正樹 みやた・まさき 阪大法卒。1971年伊藤忠商事入社。2000年日本製鋼所。法務専門部長を経て、12年から現職。二松学舎大学大学院(企業法務)と帝京大学(スポーツ法)で非常勤講師を務めた。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus