高論卓説

職場から女性消える中国「婦女節」

 3月8日は国際女性デー。世界の「ジェンダー平等」「女性のエンパワーメントの推進」を訴える日である。日本では認知度に依然課題を抱える日であるが、中国では「婦女節」として、職場の女性スタッフがお休み(もしくは半休)となったり、公的なイベントが行われたりする日である。

 近年は「女王節」などといった名称で、女性向けにEC(電子商取引)キャンペーンが行われる商戦期となっているが、その女王節とは別に、ブランディングや社会的責任という観点から、婦女節に関連したメッセージを送る企業が多い。特に女性向け商品が中心の化粧品業界では、主要購買層であるホワイトカラーの女性たちに向けてさまざまなプロモーションを行うのだが、2021年はそのメッセージ内容に現代の中国人女性たちの希求が見える気がした。

 例えば、中国コスメブランドの代表格である完美日記(パーフェクトダイアリー)では、北京、上海、広州のオフィス街地下鉄駅内でラッピング広告を展開。同時にそこを通行している女性にインタビューを行い、同施策(広告)の印象コメントを撮影し、微博(ウェイボー)公式アカウントで配信した。

 そこで得られた女性のコメントとして多かったのが「活力」や「元気」というものに混じった、「自信」や「自立」といったキーワード。中には「周りの意見に流されない」といった言葉も聞かれた。

 国際的な化粧品ブランドであるゲランもこの国際女性デーに、中国の高品位ライフメディア「一条」と中国人女性ジャーナリスト、楊瀾氏とのタイアップで、現代女性を語る動画を配信している。動画は、楊瀾氏へのインタビュー形式をとりながら、現代女性を取り囲んでいる性別による偏見や限界論などを一歩ずつ打ち破り、女性の持つ力を解き放つことを訴える内容だ。

 また同タイミングで、女性の「上揚(誇り高い)」気質、自由やありのままの優雅さなど、自然体でいながら社会で活躍しようというメッセージ広告を展開している。中国における女性の社会進出は、日本よりも進んでいるといってもいい。

 女性の高級管理職も少なくなく、中国でも名の知れた金融やサービス業の企業でも女性経営者を見かける。格力電器(グリー)というエアコンメーカーのトップである董明珠・董事長は、自らライブコマースの現場に立つなど、知名度も高い。

 こうして社会進出は進んでいるのだが、いわゆる伝統的な価値観が完全になくなったというわけではなく、「結婚は幸せ」「家事や育児は女性」「男はひたすら金を稼ぐ」といった意識に引きずられることもいまだ多い。都市部ではお手伝いさんやシッターを雇う家もあるが、子供の送り迎えや宿題まで見てくれることはない。

 結局、家事の多くは女性が行い、仕事と家庭双方の負担が女性の悩みとなっている部分があるようだ。それに相反する意味で「周りはどうあれ自分らしくありたい」「社会における達成感を追求したい」といった意識が、中国の女性の中で強まっているのではないだろうか。

 日本でも高まりつつあるジェンダーの悩みへの関心。こうした悩みに国を超えて目を向けていく姿勢が必要とされているのである。

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 森下智史(もりした・さとし) 中国トレンドExpress編集長。2015年まで17年間、中国・上海に滞在。上海では在留邦人向けのフリーペーパーの編集・ライター、産業調査などに従事。帰国後の18年に日中間の越境EC支援会社トレンドExpressに入社し、現職。

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