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東芝再建に手腕も信頼獲得失敗 53年ぶり外部起用の車谷氏

 東芝が14日開いた臨時取締役会で社長兼最高経営責任者(CEO)を辞任した車谷暢昭氏は、53年ぶりに外部起用された経営トップとして再建に力を尽くし、業績も上向いていた。だが一方で企業統治などをめぐり株主との関係は悪化、社内の求心力も失われつつあった。その矢先に浮上したCVCキャピタル・パートナーズによる東芝買収は、経営維持や「物言う株主」の排除につながる助け舟に見えたが、かえって保身を疑われ、続投の可能性を閉ざす結果となった。

 車谷氏は、三井住友銀行の副頭取やCVC日本法人の会長などを経て、2018年4月に会長として東芝入りした。2年後には当時の綱川智社長と入れ替わる形で社長となり、社会インフラやITサービスを中心とした事業構造への変革を指揮してきた。

 今期の本業のもうけを示す連結営業利益は、新型コロナウイルス禍で前期より約200億円少ない1100億円にとどまる見通しだが、2年前の354億円を大きく上回る。1月には約3年半ぶりの東京証券取引所1部復帰を実現。14日の記者会見には姿を見せなかったが、「再生ミッションが全て完了し、かなり達成感を感じている」とコメントした。

 ただ、株主の信頼は得られなかった。東芝は2年連続の債務超過を避けるために6000億円規模の第三者割当増資を実施した関係で、物言う株主を含む外国株主の比率が約7割と高い。昨年1月の子会社による不正会計発覚などを受け、こうした株主は次第に批判のトーンを強めていった。

 車谷氏は昨年7月の定時株主総会で再任されたが、賛成率は約57%と異例の低さにとどまった。この総会をめぐっては、筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが運営に不備があったと主張。今年3月の臨時総会で第三者として調査にあたる弁護士の選任を提案し、賛成多数で可決されている。

 一方、トップダウンの強引ともいえる経営手法に不満を抱く社員も少なくなかった。指名委員会が最近、上級幹部に絞って社長への信任を調査したところ、不信任の割合が過半数に達したという。数字を重視する元金融マンで、外部起用されたことが孤立を招いた面も否めない。

 CVCの初期提案には、現経営陣が引き続き経営を担う旨が記されており、車谷氏の続投にとって追い風となる可能性があった。しかし一方で、過去にCVCの日本法人会長を務めていたため利益相反に当たると指摘され、車谷氏を救うために提案がなされたとの見方が広まった。

 永山治取締役会議長は会見で辞任の理由を「個人的なご都合」と説明。買収提案との関連や解職の動きを否定したが、「慰留したのか」との問いに対しては「ご本人の固い意思ということで受理せざるを得なかった」とだけ答えた。(井田通人)

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