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消えゆく「曲がるエスカレーター」 減少続く“バブルの遺物”国内あと30基

 閉店した甲府市の山交(やまこう)百貨店の建物を引き継いだ家電量販店、ヨドバシカメラ(東京)が、名物だった曲がって進む「スパイラルエスカレーター」を撤去していたことが12日、関係者への取材で分かった。「バブルの遺物」とされるスパイラルエスカレーターは国内では新規設置が少なく、減少が続いている。(渡辺浩)

 山交百貨店の象徴

 山交百貨店は一昨年9月、65年の幕を閉じた。建物は地上5階、地下4階で、改修工事がほぼ終わり、今月下旬にヨドバシカメラマルチメディア甲府やヨドバシ子会社の石井スポーツ甲府店などが入る複合商業施設として生まれ変わる予定だ。

 山交百貨店のスパイラルエスカレーターは平成元年に1階と2階を結ぶ2基を設置した。20年に1基を撤去し、上りの1基が店のシンボルになっていた。

 関係者によると、老朽化していたことや新店舗の設計上の都合から、改修の過程で撤去した。別の直線のエスカレーターも取り外して新たなエスカレーターを設置したという。

 撤去について、ヨドバシカメラ社長室広報担当は「工事の内容は一切お答えできない」としている。

 国内で約30基

 回転運動と縦運動が密接に絡み合うスパイラルエスカレーターは高い技術が必要で、三菱電機(東京)だけが製造。昭和60年に茨城県つくば市のショッピングセンター「クレオ」に初めて設置された。

 三菱電機広報部によると、これまでに国内37基、国外74基の計111基を納入したが、クレオのエスカレーターは既に撤去された。

 製造を担当している同社稲沢製作所(愛知県稲沢市)の試験棟に平成28年に設置されて以降、国内には新設はないという。

 国内で現存するのは新潟市中央区の超高層ビル、NEXT21などの30基程度とみられる。このうち福岡市中央区の商業施設、イムズは8月に閉館し、建て替えが予定されている。

 海外は需要続く

 スパイラルエスカレーターの価格は1基2億円ほどとされる。三菱電機の担当者によると、「高価な上に通常のエスカレーターより敷地面積が必要で、バブル期は納入が多かったが、国内需要は減っている」という。

 国外では、米ラスベガスのフォーラムショップスの4基や中国・上海の上海新世界大丸百貨の12基など高級感のある商業施設などが設置。2年前にはクウェート最大級の商業施設、アベニューズに2基納入された。

 担当者は「スパイラルエスカレーターの技術を継承するにはコンスタントな製造が必要。国外から需要があるのはありがたい」と話している。

 国内の主なスパイラルエスカレーター

【千葉県】

・中山競馬場(船橋市)

【東京都】

・門前仲町スターダスト(江東区)

【神奈川県】

・ランドマークプラザ(2基、横浜市西区)

・すすき野とうきゅう(横浜市青葉区)

【新潟県】

・NEXT21(新潟市中央区)

【愛知県】

・三菱電機稲沢製作所(稲沢市)

【大阪府】

・インテックス大阪(2基、大阪市住之江区)

・心斎橋BIGSTEP(2基、大阪市中央区)

・ビオルネ(枚方市)

【鳥取県】

・米子しんまち天満屋(2基、米子市)

【岡山県】

・天満屋津山店(2基、津山市)

【広島県】

・アクア広島センター街(広島市中区)

【福岡県】

・イムズ(福岡市中央区)

・セントシティ(4基、北九州市小倉北区)

【沖縄県】

・おきなわ屋本店(那覇市)

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