金融

「金融都市OSAKA」道険し 官民で推進委設立も足並み乱れ (1/2ページ)

 海外の資金や金融機関を呼び込む国際金融都市構想が、ようやく大阪で動き始めた。トップ人事が難航しつつも3月末、官民でつくる推進委員会の設立総会開催へたどり着き、関係者は一様に胸をなで下ろした。とはいえ、自治体や経済団体、外資を含む銀行、証券など参加機関が目指す「国際金融都市OSAKA」像は定まっていない。2021年度中に今後の戦略を作るスケジュールだが、道のりは平坦(へいたん)ではない。

 ようやくトップ就任

 3月29日、大阪府庁で開かれた設立総会。「よくこれだけの企業、団体を集められたな」。地元財界の関係者は委員名簿を眺めながらつぶやいた。

 名を連ねたのは大阪府市と地元経済団体のほか、メガバンクや証券、生命保険など国内金融大手など31の企業や団体。外資系企業は一部が辞退しながら、バークレイズ証券、BNPパリバ証券、ピクテ投信投資顧問が参加し、オブザーバーとして7つの業界団体も加わった。総会後、大阪府の吉村洋文知事は「そうそうたるメンバーに集結してもらった」と胸を張った。

 当初は組織の顔となる推進委のトップ人事が難航し、目標だった年度内開催は危ぶまれていた。最終的に推進委会長に就いた関西経済連合会の松本正義会長は「金融のプロではない」と、いったんは就任を固辞。そもそも昨年12月の準備会合で「(2025年大阪・関西)万博より難しい」と突き放したように、松本氏は構想そのものに否定的だった。

 焦る大阪府側は他の財界幹部にアプローチしたものの、色よい返事は得られず、企業色の薄い経済官庁出身者や学識者など金融の専門人材も模索。一時は吉村知事が暫定会長に就くアイデアさえ出ていた。

 だが、最後は「『松本さんしかいない』と口説かれた」(関経連幹部)。松本氏は「俺しかおらんか」と周囲にこぼしながら、独自に金融機関と勉強会を重ね覚悟を決めたとされる。

 こうして開催にこぎ着けた設立総会では、21年度中に戦略策定する方針が確認された。秋には、目指す国際金融都市像をまとめた骨子を作る。その上で法人、所得税などの税制措置や在留資格の緩和を地域限定で行う「国際金融特区」創設など、国への要望を取りまとめる。国際金融特区は、吉村知事が強く求めている。

 ただ、松本氏が「どの機能を強化すべきか、どのような環境整備をする必要があるか。議論を尽くして共有できるコンセプトを作り上げなければならない」と述べるように、推進委の各組織が目指す金融都市像は一致していない。

 昨年末の準備会合で吉村知事が金融都市の柱としたのは、デリバティブ(金融派生商品)の拠点整備や、金融とITを組み合わせたフィンテック技術の活用だ。

 これに関し、経済界には実現性を含め否定的な見方が根強い。例えばメガバンク関係者は「デリバティブ市場がどう盛り上がって収益につながるのか見えない」と口をそろえる。フィンテックについても「オンラインで仕事する企業がわざわざ大阪に進出するのか」と疑問視する意見がある。

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