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下水からコロナ流行つかめ 無症状者の感染も把握、感染防止策の切り札に

 下水を分析して新型コロナウイルスの感染状況をつかもうという実証実験が各地で進んでいる。感染者の排(はい)泄(せつ)物には症状が出る前でもウイルスが含まれているためで、地域や特定の施設内で早期に感染を把握し、対策につながる。今後、本格的な実施について菅義偉(よしひで)首相も意欲を示すなど、感染流行をつかむ手段として活用が広がりそうだ。(岡本祐大、山本考志)

 下水処理場に集まった下水を分析し、ウイルスの有無をつかむ。感染者は特定できないが、各地域での未症状者や、まだ症状が出ていない潜伏期間中の感染者の存在が早期にわかり、感染流行や変異株の種類などの把握につながる。

 感染者の把握には、症状が出たり、濃厚接触者だったりした個人にPCR検査を行うのが一般的。下水調査は地域全体の傾向が把握でき、行政が感染対策をどう取るかの判断基準の一つになり得るという。低コストな点がメリットだ。また、PCR検査で陰性となった後も約20日は排泄物にウイルスが含まれているとの指摘もあり、継続的な検査で感染収束の見極めの判断材料に有効という。

 塩野義製薬は4月中旬、北海道大学と共同で大阪府内10カ所の下水処理場でモニタリングを開始した。北海道大大学院工学研究院の北島正章准教授によれば、すでにオランダなどで下水を使った調査はされていたが、日本国内は感染者数が少なく検出が難しかった。

 このため、下水を遠心分離して、ウイルスに含まれるRNA(リボ核酸)を高濃度にして検出しやすくする技術を開発。検出感度は既存方法の100倍以上になった。理論上「100万人に1人の感染者の割合でも検出できる」(北島氏)ようになったほか、検出したウイルスの中に変異株がどの程度広がっているかも分かるという。

 北島氏は「地域の感染者数が推計できれば、厳しい感染症対策を維持するのか、緩められるのかの判断材料になる」としている。

 島津製作所の子会社「島津テクノリサーチ」(京都市)は2月、下水検査サービスを開始。3月から京都府や京都市の協力を得て、福祉施設など個別の建物ごとにトイレ排水から感染を把握する「京都モデル」の実証実験を始めた。感染の可能性がある場合、施設利用者に検査を行って集団感染の防止を目指す仕組みだ。

 下水調査は東京都も4月に行ったほか、千葉県船橋市も継続的に取り組んでいるなど、各地で進んでいる。

 これらの動きを受け、政府に取り組みを求める声もあがる。4月の衆院決算行政監視委員会で、国も下水調査を採用し、本格的な調査を行ったらどうかとの質問に対し、菅首相は「可能であれば、それはぜひやりたい」と述べた。感染拡大をつかむ手段として注目されそうだ。

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