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社会問題解決は中小のビジネスチャンス

 リディアワークス代表取締役・小林史人

 社会問題に対し、大企業がそれを解決する製品開発や新サービスを担えば、中小企業が参入する余地は少ない。しかし、大企業は総じて意思決定に時間がかかり、タイムリーな問題解決ができていない。一方、中小企業は小回りが利き、短期間で解決方法を提供しやすい。リスクはあるものの、チャンスといえるだろう。

 当社は新型コロナウイルス感染拡大を受けて、除菌フィルム「キルウイルス」を開発した。印刷フィルム製造の経験を生かし、感染を防ぐ製品を提供することで、安心して暮らせる社会を実現したいと思った。感染拡大が長期化すれば、布看板などの既存事業に影響が及びかねないので、そのリスク回避策としての側面もあった。

 不特定多数の人が触れるモノの表面にウイルスが付着したとしても、短時間で多くのウイルスが減少すれば、手に付着するウイルス量は減り、感染リスクも小さくなる。そう考え、日本中の素材メーカー研究部門の人たちに声を掛けた。銀の抗菌素材は数多くあったものの、銅の抗菌素材がウイルスに対し優れた効果を有していたため、銅の素材に絞った。

 次に製品を検討した。コーティング手法は、さまざまな物体に塗装できるうえ、透明で使いやすい。しかし、塗膜の厚みムラが生じて試験通りの性能にならなかったり、時間の経過とともに表面へ汚れやヤニが付着したりすると効果を失う。効果が落ちないように拭き掃除を頻繁にすると、塗装が剥離(はくり)する場合もある。そこで、工場生産のため性能が安定しやすく、消毒液剤で拭き取りもできるフィルム製品を開発することにした。

 コンセプトは「素早く」「持続する」「除菌保護フィルム」。フィルムの印刷、のり、製法にこだわり、モノづくりを熟知した人々に協力してもらって生産した。インフルエンザやノロウイルスに対する効果は短時間で確認できた。新型コロナについては、宮崎大学で試験をしてもらい、わずか60分間で83%以上、不活化することが確認された。チャレンジ要素が非常に多く、失敗をしながらも良い製品となった。

 抗菌は菌を増やさないことで、ウイルスを減少させることではない。抗ウイルスはウイルスを減少させることだが、ウイルスは細胞に感染しなければ増えない。つまり、長時間放っておけばウイルスは減少する。抗菌・抗ウイルス製品の多くが「99.99%減少」とうたうものの、所要時間が24時間後という製品も多い。短時間で多くのウイルスが減少することが重要だ。

【プロフィル】小林史人

 こばやし・ふみと 本所高卒。山崎組、京王運輸、プロラボを経て2003年に家業のコバヤシ看板入社。10年リディアワークスを設立。誰でも上手に張れて環境にも優しい布看板「ルーファス」を開発し2019グッドデザイン賞ベスト100、2020年はばたく中小企業300社(経産省)選定。20年には除菌フィルム「キルウイルス」を開発し販売会社ウイルスケア設立。42歳。東京都出身。

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