住宅クライシス

「ハの字」型傾斜、歴代オーナーも傾き把握 「危険」指摘後に所有権3転 (1/2ページ)

 大阪市城東区の住宅密集地で、4月27日に明らかになった賃貸マンションの傾斜問題。傾きが大きい南側の建物は、8年前に専門機関が危険性を指摘して以降、所有権が3度も変わった。傾斜の責任は一義的には現在の所有者が負うとみられるが、歴代の物件オーナーも欠陥は把握していた。傾斜の事実や危険性の認識は適切に引き継がれたのか。

 「居住続行は酷」

 不動産登記簿などによると、2棟はともに昭和61年に完成し、兵庫県加古川市の工務店が賃貸経営を始めた。ところが平成24年3月、工務店は2棟を大阪市の不動産会社に転売した。

 産経新聞の取材に応じた不動産会社は、購入から数カ月後に傾きに気づいたと明かす。当然のように抗議したが「事前に説明した」「おたくもプロなら買う前に調べるべきだ」などと諭された。売買条件が、物件をありのままの状態で引き渡す「現状有姿」だったため、弁護士には民事訴訟を起こしても「勝ち目なし」といわれたという。

 工務店は取材に対し「設計図などは売却先に引き継いだ。亡くなった先代の頃のことなので分からない」と説明。そしてこの不動産会社も、専門機関が建物の危険性を指摘した4カ月後の25年7月に南側を、27年2月に北側をそれぞれ転売している。

 南側の建物所有権はその後、不動産会社の転売先だった大阪市内の業者から一度は大阪府豊中市内の太陽光発電業者に移ったが、傾斜の説明の有無が問題になり、昨年3月に大阪市内の業者に戻っている。

 建物問題に詳しい1級建築士の福島敏夫弁護士(大阪弁護士会)によると、当時の民法の規定では、不法行為から20年で損害賠償請求権が消える「除斥期間」が適用されるため、建築時の工務店側の瑕疵(かし)が傾きの原因だったとしても、すでに請求権が消滅していると指摘。また、商法の規定では、法人間の取引で瑕疵の隠蔽(いんぺい)を理由とした賠償請求権は契約から5年で消滅するとされており、建物に関する一連の責任は現在の所有者が負う可能性が高い。

 福島弁護士は「居住を続けるには酷な環境であり、もっと早く手を打つべきだった」と話している。

 住民に体調異変

 傾いたマンションに入居する数十世帯の住民の中には、体調の異変を感じながらも退去させられることを恐れ、所有者側に訴え出ることができなかった人もいた。ひとたび災害が起きれば被害が他の住宅に及ぶ恐れもあり、建物周辺の人々も不安に駆られている。

 この問題をめぐっては、築30年超の5階建て賃貸マンション2棟が「ハの字」型に傾いて接触し、うち1棟では8年前に専門機関が倒壊などの危険を指摘したにも関わらず、放置され続けた疑いが浮上している。

 「立ち上がるとふらついたり、目まいがして気分が悪くなったりすることもある」。専門機関が傾きを確認した2棟のうち、傾斜が大きい南側の建物に住む70代の男性作業員は体調の異変を実感している。ベランダに置いた洗濯機の排水があふれ、箸が机の上から落ちることもあるという。

 約5年前に賃貸契約をした際に、仲介業者や所有者側から傾きの説明はなかった。改善を求めることも考えたが、「(経済的に)新しい住居を探す余力がない。もめて退去するわけにはいかず言えなかった」。

 同じ建物の別の部屋の70代男性によると、傾きで室内に隙間風が吹き込むようになった。「いつ地震が起きるかが不安だ。早く何とかしてほしい」と訴える。

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