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新型コロナウイルス変異株は細胞に結びつく力が強い スパコン「富岳」が分析

 理化学研究所が運用するスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」を使ったシミュレーションで、新型コロナウイルスの変異株が人の細胞と結合する力が、従来株よりも強くなっている仕組みがが分かった。立教大や神戸大などの研究チームが4月28日、発表した。変異によって感染の仕組みにどのような影響が及ぶか分子レベルで解明した成果で、今後ワクチンや治療薬の研究に役立つと期待される。

 英国株は1・03倍 南ア・ブラジル株は1・2倍

 ウイルスが人の細胞に取りつく足掛かりとなるスパイクタンパク質は約1300のアミノ酸でできている。スパイクタンパク質の一部である「受容体結合ドメイン(RBD)」と呼ばれる部分と、細胞表面にある受容体が結びつくことで感染が始まる。英国株、南アフリカ株、ブラジル株ではRBDのアミノ酸の一部が置き換わる変異が起きており、感染力が強まる原因とみられている。

 研究チームは、RBDと受容体が持つ全てのアミノ酸の間で、結びつくために働く力の大きさや種類を分析し、それらが変異によってどのように変化するかをシミュレーションした。その結果を統合してRBDと受容体が結びつく力を評価したところ、従来株に比べて、英国株は約1・03倍、南ア株とブラジル株は約1・2倍強くなっていることが分かった。

 これらの数値は、実際に変異株の感染力が増している状況を裏付けるとみられる。ただ、英国株が南ア・ブラジル株より感染力が弱いことを意味するものではないという。英国株は力の総和は小さいが、RBDと受容体が接している界面近くで働く力が他と比べて強い特徴があるなど、ウイルスと細胞の相互作用は非常に複雑だ。

 変異でプラスとマイナスが反転

 例えば、感染力が強いとされる南ア株は「E484K」という変異がある。スパイクタンパク質の484番目のアミノ酸「グルタミン酸(E)」が「ロイシン(K)」に置き換わっていることを示す。

 グルタミン酸はマイナスの電気を帯びているが、リシンはプラスだ。このため、もともとは細胞側のプラスの電気を帯びたアミノ酸と安定的に結合していた力が弱まって、逆に反発するようになった。その一方で、細胞側のマイナス部分とは引き合い、結合が強まる現象が起きていた。

 こうした詳細な要素を大量に組み合わせたシミュレーションは、富岳の莫大な計算能力があってこそ可能となった。今回は細胞の受容体との相互作用を分析したが、ワクチンや薬の作用を調べる研究にも応用が期待できる。

 変異リスクに備える

 シミュレーションでは、複数の変異を共存させた現実には存在しない変異株モデルでのシミュレーションも実施し、結合する力が強まる結果が得られた。将来の変異リスクに備える研究につながるという。

 立教大の望月祐志教授は「富岳の圧倒的な計算力を生かして、相互作用の解析を行えるようになり、実験で得られないような予測ができるようになった」と話した。

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