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パリや銀座でも…実は品質が良い「都市養蜂」 大丸の屋上でミツバチ飼育

 街の真ん中でハチミツを採ろう-。大阪市のメインストリート、御堂筋のランドマークである大丸心斎橋店(大阪市中央区)がミツバチを飼育する「都市養蜂(ようほう)」に取り組んでいる。一昨年、リニューアルした本館の屋上で、現在、約5万匹のミツバチが蜜をためており、5月中旬にも初めてのハチミツが採れる。都市域の緑化を促す、大阪の新たな拠点として注目されている。

 1箱に1万匹、密なハチ

 環境保全や地域共生を目指す「心斎橋はちみつプロジェクト」が動きだした。

 地上約60メートルの屋上に上がると、「ブン、ブン」とうなる羽音が聞こえてきた。市街地を見渡せる約900平方メートルの緑地に巣箱が5つ設置され、その前で全身を黄色い防護服で覆ったスタッフが巣板を取り出し、ハチや巣内の様子を調べている。その頻度は1週間に1度。ハチの健康状態やダニの有無などを調べながら、蜜がたまる巣板を丁寧に手入れする。

 「1つの巣箱にだいたい1万匹います。手入れを怠ると、『分封(ぶんぽう)』といって新しい女王バチが生まれ、古い女王バチが巣立って別の場所に勝手に巣を作ってしまう。それを防ぐため、頻繁なチェックは欠かせません。ミツバチが人を刺すことは少ないが、刺激を与えられると危険ですから」

 こう話す同店の店舗開発担当、吉田真治さん(37)は巣板を注意深く扱いながら、群がるハチをいとしそうに眺めた。

 86年ぶりの本館建て替えが行われ、令和元年秋にリニューアルされるさい、同時に屋上に芝生を植えて緑化することを知った吉田さんが「養蜂を行えば、都市の生態系が循環するのでは」と考え、同店地下1階に店を構えるハチミツ専門店「ラベイユ」と協働し、プロジェクトを立ち上げた。

 パリや銀座でも広がる

 実は、こういった都市での養蜂は、パリなどでも行われ、世界的な広がりをみせているという。国内では平成18年に東京・銀座で始まり、大阪では21年に農機具大手「ヤンマー」の本社ビル(大阪市北区)で取り組みがスタートした。

 「おそらく関西で初めてじゃないかな。当時は今とは状況が違って、それこそミツバチを都会で飼うことに驚かれた。みなさんに理解をしてもらうのに時間をかけましたね」と、ヤンマーの本社ビルで養蜂に取り組むNPO法人「梅田ミツバチプロジェクト」代表の小丸和弘さん(56)は振り返る。

 大阪府には「巣箱は人が常時出入りする場所から20メートル以内には置けない」などとする養蜂条例があるため、離隔距離を十分にとることで条件をクリアし、23年から本格的な養蜂活動を始めることができたという。同様に大丸心斎橋店でも「20メートル規制のクリアに一番苦労しました」と明かす。時間をかけて周囲に理解と信頼を得た。

 「機会があれば、ベランダとかちょっとしたスペースに実のなる植物を植えてもらいたい」。小丸さんは街の人にもミツバチを受け入れてもらいたいと願う。

 まずは200キロの採蜜目指して

 大丸心斎橋店では、本館リニューアル直前の31年春、本館に隣接する旧北館(現心斎橋パルコ)11階バルコニーで試験的に養蜂をスタート。今年3月からはいよいよ本館で本格的な養蜂活動を始めている。

 ミツバチの行動範囲は巣から半径2~3キロとされ、ちょうど店から飛べる範囲には、大阪城公園や天王寺動物園など多くの蜜源があるという。サクラやツツジ、アベリア、フジなど季節の花によって採れるハチミツの味わいも変わってくる。5~7月が蜜を運ぶ繁忙期で、今年は約200キロの採蜜を見込む。

 都会で作られるハチミツは農薬の影響を受けないため品質が良く、ミツバチが多いことは豊かな自然環境の証しでもある。吉田さんは「養蜂を通して自然の大切さを知ってもらい、近隣の緑化が進むきっかけになれば」と期待している。

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