高論卓説

朝型勤務へ働き方改革の提案 仕事・生活の効率化に絶大効果

 3月以降、世界では新型コロナウイルス対策の措置が徐々に緩和に向かっている。米テキサス州では3月10日にマスク着用、ソーシャルディスタンス、飲食店や演奏会場の入場制限など全てのコロナ対策が全面解除となった。テキサス州では解除後も新規感染者数は低下しているという。米国では3月以降、アリゾナ州や他の多くの州でコロナ対策措置が次々と解除されている。欧州ではスペインが今月9日、非常事態宣言を解除し、イギリスでも17日には商業施設などを全面再開している。生活の正常化が進み、社会が安定を取り戻すことは喜ばしい。(杉山仁)

 また米大手金融機関では昨年来コロナ感染対策として実施されていた在宅勤務が解除されつつある。JPモルガン・チェースでは7月1日に在宅勤務を全面的に廃止する予定である。ゴールドマン・サックスも同様である。JPモルガン・チェースのダイモンCEO(最高経営責任者)は、在宅勤務では社員の「OJT」ができず、企業文化の継承に支障が生じると述べており、社員の質の維持にはオフィスでの集合勤務が必須としている。もっともな指摘である。

 今回のコロナ禍を契機として、色々な働き方改革が提案されているが、筆者は一つの選択肢として、在宅勤務に代わり、朝型勤務と規則正しい生活を提唱したい。

 朝型勤務のメリットはいくつもある。ある大手企業では社長の主導により、2013年から朝型勤務を導入し、午前8時前に出勤した社員には無料で朝食を提供し、午後8時以降の残業を禁止することで、早朝出勤を促した。その企業は、現在では半分近くの社員が朝型勤務を続けており、業績の向上が著しく、就職人気も高まっている。

 筆者は早朝勤務は組織を活性化する効果があると考えている。日本では昔から「早起きは三文の徳」ということわざがあり、英語圏でも「早起き鳥は獲物を得る」という言葉がある。

 米大陸では時差のため東海岸は西海岸より3時間早く、ニューヨークの午前9時はロサンゼルスの同6時になる。西海岸の金融機関の外為と資金の市場担当者は6時に仕事を始め、ニューヨーク市場の開始時刻に合わせている。西海岸では6時出勤の現地社員は午後2時には勤務が終了となり、午後にはテニスやゴルフに興じることができる。早朝出勤は仕事と生活の効率化に絶大な効果があることを米国勤務を通じて体験できた。

 一方、最近はネットメディアやSNS(会員制交流サイト)の使用が拡大した結果、1人のスマートフォン利用時間は20年で日本では1日平均3.7時間、全世界では4.2時間に達するという調査がある。SNS利用時間だけをみれば、19年に世界平均で1人1日2.4時間という統計もある。1日の生活時間にこれだけスマホを使用するのであれば、スマホ時間が睡眠時間を侵食していることは十分に考えられる。

 この結果、スマホを長く使用する人の就寝時刻は遅くなり、その分起床時刻も遅くなっている可能性がある。在宅勤務ではこうした傾向が助長されるのでないか。またネットメディアやSNSには偽情報が氾濫し、ユーザーはどれが真実の情報であるのか知りようがない。真偽のはっきりしないネット情報に接する時間をかけるのは非生産的である。

 朝型勤務が普及すれば、組織を活性化し、業績を向上させるだけではなく、ネットやSNSに費やす時間を睡眠時間に充てることにより、ネット情報の氾濫による弊害とそれによる睡眠時間の浸食という問題の解決につながると思う。

【プロフィル】杉山仁 すぎやま・ひとし JPリサーチ&コンサルティング顧問。一橋大卒、1972年、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。米英勤務11年。海外M&Aと買収後経営に精通する。経済産業省の「我が国企業による海外M&A研究会報告書」作成に有識者委員として参加。著書に「日本一わかりやすい海外M&A入門」のほか、M&Aと買収後経営に関する論文執筆や講演多数。

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