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有事の時ほど人の心は…エステーのCMがこの1年、強みをあえて封じているワケ (2/3ページ)

 西川さんの“人”としての熱い気持ちも映像には込められている。だからこそ、多くの人の心を動かす、CMソングと映像になったのだと思います。こうしたことはなかなか起こりえないことです。

 感情を出すことまで自粛しなくていいんだ

 西川さんが力強く「空気を変えるぞ」と歌った消臭力のテレビCMが放送された直後、ツイッターにはたくさんの感想が寄せられました。

 「音楽を聴く余裕がなくなっていたことに気付き、子供と一緒に歌ったら涙が出た。心が疲れてきている今このCMを見れてよかった。空気を変えるぞ」

 「笑いたくなったら笑う!怒るときは怒る!泣きたくなったら泣く!自粛だからって感情を出すことまで自粛しなくていい!」

 「今日は母の誕生日!じいちゃん、ばあちゃん、ひいばあちゃんに、子供たちの元気な顔を見せられるようにみんな元気でがんばろう」

 「この前お店を開けてくれてありがとう、というお客さまの心からの言葉に泣きそうになりました!(小売業)」

 「泣くことを我慢するのはやっぱり良くないね!悲しいとき、つらいとき、泣いてもいいって思えることって、ほんとに素敵なことだと思う!」

 しかし、その後ほどなくして、世の中の空気はまた大きく変わっていきます。

 政府による、初めての緊急事態宣言の発令、「生活の維持に必要な場合」を除く外出自粛要請、学校や映画館などの休校・休業、イベント開催の制限の要請。県をまたぐ移動や飲食店の開業時間の制限、出社の制限、リモート勤務など次々に感染対策が打ち出されました。

 コロナ禍で生まれた広告業界の「暗黙の了解」

 感染防止拡大の観点から提唱された「新しい生活様式」は、広告制作の現場にも影響を及ぼしました。広告業界ではさまざまなガイドラインが作られています。その内容には制作現場のスタッフや出演者を守るものはもちろん、「世の中の空気に沿わない表現をしないため」の暗黙の了解も含まれています。

 例えば、こんな内容です。

 ・大人数が集まる表現(飲み会、居酒屋、スーパーマーケットなど)には感染リスクがあるため、注意が必要である

 ・新型コロナの感染拡大に伴い、亡くなった方もいるため、「おめでとうございます」「お祝いです」といったメッセージには配慮が必要である

 ・同じ空間内に2人以上の出演者がいる表現は、感染リスクがあるため、配慮が必要である

 これらのさまざまなガイドラインを背景に、テレビでは遠隔出演が一般的になり、音楽ライブイベントは中止あるいはオンライン配信に替わっていきました。報道は新型コロナ一辺倒です。世間の空気は「正論」一色となり、新型コロナ陽性者はバッシングされ、感染リスクも顧みずに里帰りした人は非難を免れません。そして、高校生たちが明るく元気に歌い、踊るテレビCMはネットで炎上しました。

 論理的に考えれば、新型コロナの感染リスクを下げるにはできるだけ外出を避けるのが正しいし、飲み会に行っている場合ではない。私自身もそれが正しいと思っているし、社会のルールに従っているのだけれど、心の奥底では納得できず、不満に思っている。どこか無理やりに不条理を押しつけられているような心持ちがそこにはあったのです。

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