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「このままでは日本車は本当にヤバい」自動車評論家が決死の覚悟でそう訴えるワケ (2/3ページ)

 日本メーカーとは生産方式が全く違う

 「航続距離400キロで実売200万円以下の電気自動車」というと、「そんな車作れるのか」と言う人がいるかもしれませんが、テスラならできるでしょう。テスラは「いい」と思ったものは先入観なくすべて取り入れていく、究極の合理主義体質の企業です。彼らは車の設計思想だけでなく、生産方法においても大きなイノベーションを起こそうとしています。例えば「インゴット生産」大型アルミ鋳造生産によるのもそのひとつです。

 一般的な車のフレームは何十枚もの鉄板をプレス成形し、それを溶接で貼り合わせて作られています。ところがテスラでは、米宇宙企業のスペースX社でも使われている特殊なアルミニウムを金型に流し込んで、一気に成形してしまうのです。生産効率が飛躍的に上がり、コストも重量も大きく削減できます。

 すでにテスラのSUV「モデルY」を生産するカリフォルニアのフリーモント工場やモデル3を生産する中国の上海工場ではアルミ鋳造生産の領域を増やす動きがでていますし、今年稼働開始予定のベルリン工場では100%アルミ鋳造生産でスタートするようです。このような製造上の革新も使い、新型コンパクトモデルは高性能と破壊的な価格を武器に日本にも上陸してくるはずです。

 サプライヤーでは進化についていけない

 これまで自動車業界では、ドイツがやっているような「自動車メーカーがスペシャルなサプライヤーと組んで開発を進める」という体制がベストではないかと言われていました。しかしテスラは今、さまざまなパーツをどんどん自社製に変えています。

 2012年に発売されたモデルSには、運転支援用に米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)のAIチップが入っていましたが、今は自社開発のAIチップを載せています。

 高級になるほど自動車は多数のAIチップを積み、「搭載チップの数=高性能の証し」とされていましたが、その価値判断は終焉を迎えるかもしれません。テスラでは電装系、運転系、運転支援系の3つしかありません。これはサプライヤーに頼らず、単独で開発を進めているから可能なことであり、結果、統合的な判断や制御が可能となります。

 おそらく「すべてをテスラ自身で管理し、コントロール下に置かなければ、テスラの進化スピード、イノベーションについて来れない」という理念があるのでしょう。ここでもテスラは、業界の常識を打ち破っています。

 日本人が知らないテスラの野望

 日本人の多くはテスラについて、名前だけしか知りません。それはテスラが広告費ゼロの会社だからです。「車が良ければ自然に売れる」というスタンスで、日常的な唯一の広告といえるのは、イーロン・マスクが自ら発信しているツイッターぐらい。なので、関心のない人にはテスラの情報は何も入ってきません。

 例えば2021年1月にはモデルSが大幅にリニューアルされ、上位グレードは航続距離837km(アメリカEPA基準)、0-100km/h加速はスーパーカー以上の2.1秒となりました。これも日本ではまったく知られていませんが、自動車にくわしい人ならそのすごさが分かるでしょう。

 テスラは運転支援の精度を高めるために、販売した車を用いて情報を収集し、リアルな公道で実証実験を行っています。テスラオーナーであれば、「今後の自動運転のためにデータ提供をしてくれますか」とクルマのモニター上で聞かれたことがあるでしょう。

 ドライバーが運転支援機能を使わなくても、テスラ車では裏で常に運転支援機能が「このときにはこういう操作をする」という演算を行っています。そしてその結果と実際のドライバーの運転操作を照合させ、差異をデータとして収集しています。

 そうやって集めたビッグデータをAIにディープラーニングさせて、それに基づいて車のファームウエアをアップデートしていく。その延長線上で、あらゆる環境で使える自動運転を実現させようとしているのです。

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