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「巨大太陽嵐」ハイテクの脅威に 25年に活動ピーク、通信・電力大混乱のリスク (1/2ページ)

 太陽活動が昨年、11年周期の拡大期に新たに入ったことで、2025年のピーク時には激しい宇宙天気である磁気嵐による通信網や電力系統への被害が懸念されている。

 数百万人停電の恐れ

 観測史上最も強力だったのは「キャリントン・イベント」と呼ばれる1859年の太陽嵐で、北米と欧州では電信線の帯電によりオフィスが発火するなどの被害が出た。今日、その規模の磁気嵐が生じれば、数十億人ではないにせよ、数百万人が停電に見舞われる公算が大きい。

 カナダ・ケベック州の電力会社イドロ・ケベックのウェブサイトによると、1989年3月に発生した太陽嵐により州全体で9時間もの停電が起きた。

 太陽嵐はコロナ質量放出(CME)と呼ばれる現象で、コロナガス(プラズマ)が惑星間空間に爆発的に大量放出される。地球に衝突しても、地上にいる人々の目には見えず、多くの場合は害はない。だが、地球磁場を通過すると、何年にもわたる強力な磁気嵐を引き起こし、電力網をまひさせ、無線通信を妨げ、航空機乗務員は危険水準の宇宙線で被曝(ひばく)し、重要な衛星が故障する可能性もある。17年前の巨大太陽嵐の直撃を受けて以降、世界は先端技術への依存度がかつてないほど高まっており、大混乱に陥る恐れがある。

 5月半ばにもCMEが起こったが、宇宙天気に特に影響を及ぼすほど強力ではなく、それほど支障もなかったため、発生を知る人もほとんどいなかった。だが、太陽の活動周期が長年の極小期から拡大期に転じたことへの注意喚起にはなった。

 米地球物理学連合(AGU)の学術誌が2017年に掲載した論文の予測によれば、米国の人口の66%相当が激しい宇宙天気に起因する停電に見舞われ、経済損失は1日当たり415億ドル(約4兆5470億円)に達する可能性があるという。

 こうした大惨事を回避するために、米国ではオバマ政権時代に大規模太陽嵐の危険性についての認識を高め、リスク評価の戦略を打ち出し、トランプ前大統領は昨年、宇宙天気事象の予測、測定を向上させる技術構築を目的としたPROSWIFT法案に署名した。

 地球のインフラの脆弱(ぜいじゃく)な部分を太陽嵐の影響から防護するには何ができるかをめぐり、科学者らは議論している。変圧器に加熱が生じないステンレス鋼など非磁性鋼を用いたり、電力送電網へのサージ防護機器の設置を増やしたりすることで耐性を強化できる可能性はある。ただ結局のところ、大惨事に対する最善の防御策は、より精度の高い予測かもしれない。

 「予測能力は限定的」

 ミシガン大学が開発した新モデルが数週間で稼働開始すれば、地上の予測改善に寄与する見通しだ。

 英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)のデピュティ・ディレクター、マーク・プラウス氏によると、同国では送電大手ナショナル・グリッドが予備の変圧器の供給を増やし、大型の宇宙天気事象に対処する定期的な訓練を実施している。

 過去15年で米国と英国は航空会社や電力送電網、衛星の所有者など、太陽フレアの脅威にさらされる者のために太陽から発生する可能性があるものについて、日々の見通しを提供する宇宙天気予報センターを設立した。ただ、地球上の観測者らは爆発的な嵐が太陽で発生するのを見ることはできるが、その脅威の本質、つまりどの程度強力かを地球から100万マイル(約160.9万キロメートル)離れたところにある衛星群に当たるまでは具体的に語ることはできない。そこから地球に至るまではわずか60~90分だ。

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