金融

最低賃金引き上げ「今かよ!」 骨太原案にコロナ禍の中小企業から怨嗟の声

 政府が9日示した「骨太の方針」原案に最低賃金を全国平均で早期に1千円へ引き上げることが盛り込まれ、中小企業から悲鳴と怨嗟(えんさ)の声が上がっている。政府の狙いは賃上げによる消費喚起と経済回復だが、新型コロナウイルス感染拡大で中小企業は経営が苦しく、人件費の膨張が打撃となるからだ。ある経済団体の関係者は「まずはワクチン接種でコロナ禍を収束させ、経済活動を正常にすることが先決だ」と憤りを隠さない。(黒川信雄、岡本祐大)

 赤字に追い打ち

 「緊急事態宣言でお酒が提供できず、売り上げはコロナ禍前の2割に落ち込んでいる。そのなかでの賃上げは本当に苦しい」。関西中心に和食店を展開する中小企業の幹部は、政府の方針に苦渋の色を浮かべた。

 結婚式や宴会用に花を販売する企業の関係者も「結婚式は規模が縮小され、宴会も大半が延期かキャンセル。大赤字の状態に追い打ちをかけるのか」と政府を批判する。

 個人経営に近い零細企業はさらに苦しい。従業員数が5人の奈良県の建築資材会社経営者は「社長の給料を切り詰めて従業員の給与を払っている。会社が存続するかも分からない状況で、さらに努力しろとは納得できない」と吐き捨てた。

 最低賃金はパートやアルバイトを含む全ての労働者に適用される賃金の下限額だ。下回る金額を支払った企業には罰金が科される。都道府県ごとに時給で示され、毎年度改定される。近年は、コロナ禍でほとんど上がらなかった令和2年度を除き、基本的に引き上げられてきた。

 だが、最低賃金の額は地域間で格差がある。2年度の最低賃金は東京都が時給1013円、神奈川県が1012円と1千円超。一方、他の道府県は大阪府が964円、愛知県が927円など1千円に満たず、全国平均は902円だった。

 非正規削減も

 この格差について、日本総合研究所の若林厚仁・関西経済研究センター長は「安倍晋三前政権が金融緩和で円安を誘導し輸出が増えたが、恩恵を強く受けたのは大企業だった。そのため大企業が集中する東京などの都心部ほど賃金が上がりやすく、中小企業が多い地方では上がりにくい傾向がある」と分析する。

 また、政府が今回、骨太方針の原案に最低賃金の引き上げを盛り込んだのは、「(コロナ禍で傷んだ)消費の拡大と内需の活性化が期待できる」(若林氏)ためだ。

 だが、若林氏は、中小企業への影響に関し、「多くの企業は経営が悪化したとき賃金を抑えて雇用を維持してきた。人員の解雇が簡単でないことを踏まえると、賃金上昇は経営に大きな負担になる」と分析する。

 同じように、中小企業支援を手がける大阪商工会議所の関係者も「最低賃金を無理に引き上げ、コロナ禍で傷んだ中小企業の経営がさらに悪化すれば、逆に非正規労働者の雇用の削減などにつながりかねない」と懸念する。

 その上で「まずはワクチン接種の早期完了でコロナ禍を抑え、消費を回復させたり、下請け企業が労務費の上昇分を発注元に価格転嫁しやすい仕組みを整えたりするべきだ」とし、まずは、中小企業の経営環境を改善することが先だと訴えた。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus