開発物語

第一三共ヘルスケア「ロキソニンSプレミアム」(1)

 ≪STORY≫

 ■鎮痛効果・安定性高めながら飲みやすく

 販売開始から10年となる第一三共ヘルスケアの鎮痛薬ブランド「ロキソニンS」の売上高が、昨年度は107億円となり、初めて100億円を突破した。牽引(けんいん)役となったのは、つらい頭痛に特化した「ロキソニンSプレミアム」だ。その開発には、医薬品レベルの効果と安全性の両立を目指す研究者たちの見えざる苦労と熱い思いがあった。

 2011年に発売された「ロキソニンS」は、医療用の非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)である「ロキソニン錠」(一般名:ロキソプロフェンナトリウム水和物)を市販薬に転用したスイッチOTC薬だ。解熱鎮痛成分のスイッチOTC薬は、イブプロフェン以来26年ぶり。医療用医薬品として長年、国内外で使用されていたロキソプロフェンナトリウム水和物の初の市販化だけに、発売当時は大きな話題となった。

 ロキソニンSの発売を契機に、効き目が重視される解熱鎮痛薬市場では「ロキソプロフェンナトリウム水和物含有医薬品」の開発競争が始まり、15年ごろから各製薬会社の商品が店頭に並んだ。

 こうしたなか、同社は1986年にロキソプロフェンナトリウム水和物を開発・発売した、いわば“生みの親”である第一三共のグループ会社という強みがあった。ロキソニンS発売後、グループ内で共同開発体制や人材交流などを図り、開発ノウハウを蓄積、商品を生み出していった。

 2015年には女性を意識した小粒の「ロキソニンSプラス」を発売。さらに翌年、「ロキソニンSプレミアム」とともに、塗ったり貼ったりする外用薬シリーズも発売。外用薬シリーズではその後、ローションタイプも発売しており、開発競争をリードする存在となっている。

 第一三共ヘルスケアによると、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大によるストレスや生活様式の変化などが、新たな頭痛要因になったという。CMキャラクターに女優の石原さとみさんを起用し、頭痛への効果をアピールした「プレミアム」は特に好評で、同シリーズ内服薬の売り上げは前年比1%増。外用薬シリーズが第2類医薬品に移行して販路が拡大したことも寄与し、シリーズ全体の売り上げが100億を超えた。

 実は「プレミアム」の開発の検討に着手したのは、先に発売した「プラス」よりも早い09年。当時は医療用医薬品であるロキソニンに新しい成分を加える国内初の取り組みだっただけに、厳しい基準が求められた。約3人の製剤研究チームで臨床試験を慎重に重ね、医薬品の承認申請まで約5年、発売までさらに2年かけた。

 開発当初から研究チームに所属している、研究開発部研究センター製剤研究第一グループの望月裕介副主任研究員(45)は「ロキソニンというブランドへの期待に応えるため、医療用医薬品であった品質を落とすわけにはいかない。厳しい基準で、良いものを作らなければと思った」と振り返る。

 プレミアムの処方は、解熱鎮痛効果のある成分の組み合わせをいくつも試した末に、ようやくたどり着いた。ロキソプロフェンナトリウム水和物に加え、鎮痛補助成分として無水カフェイン、鎮静成分としてアリルイソプロピルアセチル尿素を配合した。さらにメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを加え、胃粘膜を守りつつ胃酸を中和し、胃への負担を少なくした。

 医療用医薬品と同レベルの効き目を目指した商品ならではの苦労は、有効成分の選定だけではない。「含有すべき有効成分が多いため、錠剤に十分に配合できないといった大量生産に伴う不具合をいかに起こさないかに苦労した」。13年から研究に加わった、同グループ主任研究員で薬学博士の加茂倫有さん(43)はこう打ち明ける。

 錠剤は一般的に、有効成分と添加成分とで成型される。添加成分は乳糖やセルロースなど無害で薬理作用のないものだが、有効成分を錠剤に均一に配合できるよう粉の流動性を高めたり、出来上がった錠剤の強度を向上したりと、大量生産での安定性を高める重要な役割がある。錠剤は1錠200~300ミリグラム程度が飲みやすいとされ、有効成分を増やした分、添加成分を調節する必要がある。

 ロキソニンSの主成分であるロキソプロフェンナトリウム水和物には粘性があり、添加成分を減らすには、その特性に対処する方法を探す必要があった。「打錠機に薬剤がくっついて均一に配合できなかったり、張り付いた薬剤で機械が動かなくなったりすることもあった」と振り返る。このため、添加成分を見直したり、打錠機の動かし方を変えたりと工夫した。

 成分の配合を決めた後も、生産工程をめぐって思わぬトラブルに見舞われた。販売開始を翌年に控えた15年の夏、研究センターの機械などで成功していた錠剤のフィルムコーティングが、取引先工場では失敗を繰り返したのだ。

 原因は、コーティング装置に装着されているノズルの違い。各工場のノズルを調べ、それぞれの特性に最適な温度設定やスプレーの吹き付け速度、パターンなどを確認していった。スケジュールに追われながら、模擬剤を使って実験し、仕上がりを顕微鏡などで確認する作業を繰り返す日々。加茂さんも望月さんも、「試練だった」「夢に見るほどしんどかったが、チームで乗り越えられた」と声を合わせる。

 発売開始から今年で5年を迎えた。チームにはプレミアム発売以降に入社した吉田寛恵さん(28)も加わり、新製品の開発を進めている。加茂さんは当時の経験やノウハウを伝え、人材育成に力を入れている。「本当に痛いときに安心して使ってもらえるような、高品質の薬を届けていきたい」と力を込めた。

                  ◇

 ≪KEY WORD≫

 ■ロキソニンSプレミアム

 2016年に発売された第一三共ヘルスケアの解熱鎮痛内服薬(第1類医薬品)。医療用医薬品として処方されている非ステロイド性消炎鎮痛薬「ロキソニン」を、一般用医薬品とした同社の「ロキソニンS」内服薬シリーズのうち、最も有効成分が多い。鎮静成分やカフェインを配合して鎮痛効果を高めつつ、胃粘膜保護成分も加えており、特につらい頭痛に悩む消費者から支持されている。大人(15歳以上)1回2錠。メーカー希望小売価格(税別)は、12錠698円、24錠1180円。

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