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「中長期で考えたら維持できない」 コロナで岐路に立つ福岡のレジャー施設 (1/2ページ)

 福岡のレジャー施設が岐路を迎えている。ボウリング場やスケートリンクの閉鎖や休館に加え、老舗遊園地「かしいかえんシルバニアガーデン」(福岡市)も年末での閉園が決まった。平成29年に大型施設のスペースワールド(北九州市)が消え、行楽の選択肢が次々と失われている。巨額投資を必要とする施設から、持続可能な業態へ。業界は過渡期にある。

 「中長期で考えたら維持できない」

 3月、かしいかえんを運営する西日本鉄道の倉富純男社長(当時)は、12月30日での閉園を発表し、苦渋の表情を浮かべた。

 かしいかえんは昭和31年に開業し、60年以上にわたり、福岡都市圏を代表する遊園地として親しまれてきた。子供のころ訪れた人が親となって再訪し、身近な遊園地として、県民の思い出深い場所となっている。

 レジャーの多様化や少子化で来場者が減る中、西鉄は存続に努力してきた。平成21年には西日本初となるシルバニアガーデンに大規模リニューアルし、29年にも3世代で楽しめる場所を目指し遊具を新設し、フラワーガーデンを整備した。イベントや夜間営業で需要創出に知恵をしぼったが、ぎりぎりの運営をコロナ禍が直撃した。

 一企業では困難

 かしいかえんの閉園は、福岡の都市規模でも遊園地の運営が難しいことを示した。レジャー施設は巨額の投資を必要とし、利用者が減少する中での維持は困難を極める。リピーター獲得には常に新しい要素が必要で、メンテナンスが欠かせない。設備に常に「更新」が求められる中、経営努力が限界に達すれば、撤退にかじを切るほかない。

 西鉄はコロナ禍で業績がかつてないほど落ち込み、不採算事業の整理を進めている。5月には、グループの西鉄興業が運営するボウリング場「西新パレスボウル」(福岡市早良区)も来年3月末で営業終了すると発表。近年は利用が低迷していた。

 ボウリング場をめぐっては、西日本最大級だった「博多スターレーン」(同市博多区)が31年3月に閉鎖され、愛好家が惜しむ声を上げた。

 今月末には、西部ガス子会社が運営する福岡市で唯一の常設スケートリンク「パピオアイスアリーナ」(同市博多区)が休館となる。西部ガスは当初、経営難から閉鎖を検討したが、練習拠点を置くスケート団体が運営継続を要望し、設備点検のための休館とした。ただ、同社の道永幸典社長は「一企業だけで支え続けることは難しい」と訴える。

 施設の閉鎖は、地域経済に与える影響が大きい。スタッフの解雇や周辺の飲食店の来客減、来場者を運ぶ鉄道やバスの利用者も減る。大型施設であれば、近隣のホテルや土産店にも響く。地域からにぎわいが失われるとの印象も与え、住民に喪失感が広がる。

 平成21年に長崎県佐世保市のテーマパーク「ハウステンボス」に閉園危機が浮上した際には、地元からの救済要請を受け、福岡経済界が支援に乗り出した。当時、九州電力会長で、九州経済連合会会長でもあった松尾新吾氏(現・九電特別顧問)が主要企業を取りまとめ、旅行会社「エイチ・アイ・エス」(HIS)創業者、沢田秀雄氏(現・同社会長兼社長)に再建を要請。九電、西部ガス、九電工、JR九州、西鉄の5社は計10億円の出資を決定し危機を脱した。

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