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自動車部品、ベトナム国内の調達率向上へ挑戦

 ベトナム自動車市場の規模は小さく、日本企業にとっては取るに足りないものだった。東南アジア諸国連合(ASEAN)の貿易自由化が進展すれば、ベトナムに自動車産業は不要になるという見方も強かった。今、自動車需要は普及期を目前とする。製造拠点としての可能性は増しているのだろうか。

 20万台市場に急拡大

 ベトナムを訪れる日本人の印象に残るのは、いまだにバイクの群れである。2018年の自動車保有率は100人当たり2.3台と、タイ(20.4台)や日米欧(50台以上)に比べて1桁少なかった。特別税が障壁となり乗用車販売台数は年10万台に満たず、低迷を続けていた。

 しかし近年、所得上昇や貿易自由化、税率軽減などから市場は急拡大し、20年の販売台数は20万台とタイの半分程度となった(商用車を加えると同40万台以上、タイは同約80万台)。現在は2大都市(ハノイ、ホーチミン)が乗用車所有率の45%を占めるなど牽引(けんいん)しているが、今後は地方での普及が進むだろう。

 販売台数は新型コロナウイルス禍の20年、タイは約20%減、インドネシアは約50%減となった一方、ベトナムは約8%の減少と底堅く、21年4月は前年同月比2.5倍と力強く回復している。

 ベトナム最大の複合企業ビングループ傘下の「ビンファスト」は19年にエンジン車の供給を開始し、21年末発売予定の電気自動車(EV)「e34」を含め12車種をそろえるなど自動車生産が軌道に乗っている。ただし、部品の国内調達率は10~20%にとどまり、その分、近隣諸国に比べて原価が高い。同社は国内調達率を向上させ、年間生産台数を足元の25万台から25年に50万台とする計画を打ち出している。

 他のベトナム企業「Thaco」や「Thanh Congグループ」も同様に国内調達強化に進むことが考えられるため、ベトナム市場でシェア上位の日韓メーカー(トヨタ自動車、現代自動車など)でも、ASEAN分業のなかでベトナムでの調達強化という選択肢が出てくるかもしれない。

 ベトナム政府や業界団体は国内調達率を40%に引き上げることに加え、完成車輸出も計画している。さらに▽年間生産台数100万台▽年間販売台数90万台▽保有率を100人当たり5台▽部品メーカー1000社以上▽高速道路5000キロメートル-などを掲げ、コロナ禍後の中国からの製造拠点移転を契機に自動車社会を作り上げたい考えだ。

 輸入品切り替え好機

 ベトナムで自動車産業は18年、国内総生産(GDP)の3%を占め、ドイツ(4%)、中国(5%)、タイ(12%)と並べてみても意外に大きい。例えば、年間生産台数50万台、平均販売価格4億ドン(約192万円)とすると、既に市場規模1兆円の大産業である。

 今後は国内調達率を上げ、いかに国内に付加価値を落としていくかが最重要課題となる。裾野産業としては電子産業の飛躍とともに部品材料産業も育ってきているはずだが、自動車産業にとっては輸入品から切り替えられるかの重要なタイミングである。

 わずか3年ほど前、ビングループが1年以内に自動車産業を立ち上げるべく協力を仰いだときは、日本の業界関係者は楽観しない向きがあった。ビングループは小売りや不動産では成功しているものの自動車は同じようにはいかないと考え、その結果、協業機会を失った。「先進国との差が大きいとして諦めず、手順を踏めば追い付ける」というのが、今のベトナム人経営者のマインドである。

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 B&Company株式会社:日系初のベトナム市場調査専門企業。同社サイトではベトナム国内での企業調査や消費者調査の結果を公表している。問い合わせ先:info@b-company.jphttps://www.b-company.jp

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 「ASEAN経済通信」  https://www.asean-economy.com

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