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JR東の"天然水ゼリー"、前年比313%の大ヒット商品に育つまでの紆余曲折 (1/2ページ)

 自販機のビッグデータを最大限活用

 自販機中心の天然水ブランドという地味なカテゴリーながら、幅広い年齢層から話題にされ販売を伸ばしている商品がある。「ミドル層×朝の時間帯」という偏った購買傾向を、年齢層、購入時間帯ともに広げることに成功した方法とは--。

 7月24日は何の日か

 間もなく始まる、東京五輪。特殊な環境下での開幕となりますが、皆さんは新型コロナの感染拡大前から、毎年7月24日が「何の日」とされていたか、ご存じでしょうか。

 正解は、「テレワーク」の日。実は、総務省をはじめ各官公庁は、7月24日、すなわち2020年に東京五輪の開会式が行われるはずだったこの日を、「テレワーク・デイ」として設定(17年~)。働き方改革の一環として、企業や社会に「毎年この日は、テレワークの予行演習をしてください」と呼びかけていました。

 大きな理由は、通勤電車の混雑緩和と、いわゆる「2025年問題」。数年後、人口が最も多い団塊世代の介護を、子世代などが“働きながら”カバーしなければならなくなるとも言われ、通勤せずに働ける就業環境の整備は、社会にとって喫緊の課題でした。

 つまりテレワークの導入は、コロナ前から、国や経済団体の間で「暗黙の合意」だったのです。

 自販機から生まれた大ヒット商品

 人口減少のうえテレワークが普及すれば、当然ながら通勤電車などの旅客収入は落ち込みます。だからこそ鉄道各社はここ数年、それ以外の収益割合を増やしていこうと、さまざまな取り組みにチャレンジしてきました。

 その一つが、JR東日本グループ。ルミネ、アトレなどのショッピングセンター事業やホテル事業、さらに近年はエキナカの「エキュート」など商業施設の活性化、そして駅に約8500台も設置されている「自販機」の有効活用に、積極的に取り組んでいます。

 その自販機から生まれた大ヒット商品が、「フロムアクア 天然水ゼリー(以下、天然水ゼリー)」(JR東日本クロスステーション/東京)。

 20年3月の発売以来、「天然水のゼリーってなに?」などとSNSを中心に話題となり、21年5月期の販売実績は、対前年比で313%と、驚異的な伸びを記録しました。

 実はこの商品に、他業界でも応用できる「DX(デジタルトランスフォーメーション)」のヒントが、隠されているのです。

 ルーツは50年前にさかのぼる

 「天然水ゼリーのルーツは、1970年代、上越新幹線のトンネル工事までさかのぼります」と話すのは、同ウォータービジネスカンパニー・商品部の飯田早夜(さや)さん。

 鉄道ファンの方々は、既にピンと来ているかもしれません。1971年、上毛高原駅(群馬県)から越後湯沢駅(新潟県)に及ぶ、長さ22.2kmもの距離を掘ることになった、「大清水(だいしみず)トンネル」。

 ですが掘り始めて7年後の78年、なんと毎分30トン以上もの出水が湧出し、トンネル工事の大きな妨げとなりました。これを当時、作業に当たった人たちがなんとか克服したのですが、このとき、次世代につながる大きな“発見”があったのです。

 それが、湧出した天然水が思いのほか、おいしかったこと。

 その後、障害になった湧水は融雪作業で使われていましたが、1984年に「おいしい」との評判を聞きつけた旧国鉄職員の提案によって開発、発売されたのが、ミネラルウォーターの先駆けとも言える「大清水(おおしみず)ブランド」でした。

 ちなみに「大清水(おおしみず)」の名は、先のトンネル名のほか、「おいしい水」を文字ってネーミングした、との逸話もあるとのこと。

 その後07年、リニューアルによって谷川連峰と天然水の透明で清らかなイメージを再現したのが、先の「天然水ゼリー」開発のきっかけとなったミネラルウォーター、「フロムアクア」だったのです。

 自販機の天然水が抱えた“ある課題”

 そんなフロムアクアですが、実はある「課題」を抱えていました。

 それが、購買者や売れる時間帯に、偏りがあること。自販機で「フロムアクア」を購入するユーザーの多くが40、50代男性で、時間帯は“朝”の通勤時間帯がメイン。午後以降や10、20代の若者、そして女性には、いまひとつ売れ悩んでいました。

 「自販機で売られるフロムアクアのペットボトルは、530mlと280mlの2タイプ。女性は530mlを1日で飲みきれないのではないかと考え、18年から少量サイズ(280ml)でも、女性が好むフレーバーウォータータイプを発売、展開し始めました」(飯田さん)。

 「甘夏みかん」投入も、購入者はミドル層がメインのまま

 すると、まず売れる時間に変化が見えるようになった。朝だけでなく“午後”の時間帯に、自販機でフレーバーウォータータイプが売れ始めたのです(現在は販売終了)。

 商品群の多くは、「甘夏みかん」や「徳島ゆず」「シークワーサー」などの季節の果汁に、ミントやジャスミンなどさわやかな香りを加えたもの。このことから、「たぶんランチ後のほか、ホームで電車を待つ間などに、爽快感やリラックス、リフレッシュ感を求めて買ってくださるのではないでしょうか」と飯田さん。

 ただ、それでも“夕方~夜”にかけての時間帯は伸び悩み、ユーザーも依然として40、50代の男女が中心だったといいます。

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